月2回の帰省が当たり前に…夫婦が見直した「第二の人生」
高速道路代とガソリン代、実家で必要になる日用品。1回なら大きな金額ではありませんが、往復を繰り返せば月数万円になることもあります。
それ以上に変わったのが、夫婦の時間でした。
旅行を予約しようとしても、「その週は母の通院がある」。久美子さんが友人と出かけようとしても、正志さんから「できれば一緒に実家へ来てほしい」と頼まれることがありました。
芳江さんを放っておくことはできません。しかし、この生活が数年続けば、夫婦自身も70代に近づきます。
総務省『令和4年就業構造基本調査』によると、介護・看護を理由に過去1年間に前職を離職した人は約10万6,000人でした。介護の問題は現役世代だけのものではありませんが、仕事や自分自身の生活との両立が難しくなるケースがあることが数字からもうかがえます。
夫婦は芳江さんを交えて、今後について改めて話し合いました。
「お母さんが家にいたいのは分かる。でも、僕たちだけで全部やるのは難しい」
正志さんはそう伝え、ケアマネジャーにも相談。利用できる介護サービスを見直し、日用品については宅配も利用することにしました。緊急性のない用事は、次の帰省時にまとめて対応します。
芳江さんも最初は「他人に頼むほどじゃない」と嫌がりましたが、少しずつ受け入れるようになったといいます。
なお、働きながら家族を介護する場合には、育児・介護休業法に基づく介護休業などの制度があります。介護休業は対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割して取得できます。介護休業は介護をすべて自分で担うためだけではなく、仕事と介護を両立できる体制を整えるために利用することも想定された制度です。
正志さん夫婦は、予定していた旅行をすべて諦めたわけではありません。長期間の旅行は難しくなりましたが、芳江さんの予定を確認しながら、2泊程度の旅行へ出かけることにしました。
「退職したら自由になると思っていました。でも、自分が65歳なら、親は90歳。そのことを老後の予定に入れていなかったんです」
久美子さんも、「思い描いていた第二の人生とは違うけれど、自分たちの時間まで全部なくす必要はないと思えるようになった」と話します。
親の介護がいつ始まり、どの程度続くのかを正確に予測することはできません。だからこそ、自分たちだけで抱え込むことを前提にせず、介護保険サービスなどを利用しながら、どこまで家族が担うのかを考えておく必要があります。
正志さん夫婦の「第二の人生」は、予定していた形では始まりませんでした。それでも、母の生活と自分たちの老後をどちらか一方だけにしないため、夫婦はいま、新しい暮らし方を探しています。
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