「毎日、何してるんだ?」半年後に父が感じた違和感
訪ねたのは平日の午後でした。部屋に入ると、亮介さんは部屋着のままパソコンの前に座っていました。
「今日は何してたんだ?」
「別に。午前中に起きて、相場見て、動画見てた」
「昨日は?」
「同じような感じかな」
誠さんが気になったのは、部屋が散らかっていたことでも、息子がお金に困っていたことでもありません。むしろ資産は大きく減っておらず、生活費も本人が決めた範囲に収まっていました。
それなのに、以前より表情に張りがなく見えたのです。
会社員だったころの亮介さんは、忙しいと文句を言いながらも、同僚との話や新しい仕事についてよく話していました。それが今は、「今週何をしたのか」と聞いても、すぐには答えが出てきません。
「お前、自由になりたかったんだろ?」
誠さんが聞くと、亮介さんは少し考えてから答えました。
「自由なんだけどさ。毎日休みだと、今日やらなくても明日でいいってなるんだよね」
総務省『日本の統計2025』によると、35~59歳の単身世帯の1ヵ月の消費支出は平均19万4,438円でした。年間にすれば約233万円です。もちろん実際の支出は住居形態や生活水準によって大きく異なりますが、長期間仕事をしない生活では、日々の支出だけでなく数十年単位の生活設計が必要になります。
ただ、誠さんがその日気になったのは資産計画ではありませんでした。
「金の計算はしてたみたいだけど、会社辞めたあと毎日何するかは考えてなかったんじゃないか」
そう言うと、亮介さんは否定しませんでした。
仕事を辞めた当初は旅行や趣味を楽しんでいましたが、それも数ヵ月すると日常になりました。平日に会える友人は少なく、以前の同僚とも自然に連絡を取る機会が減っていました。
その後亮介さんは、以前の仕事で付き合いのあった知人から声をかけられ、週に1、2日だけ業務を手伝うようになりました。報酬以上に、「火曜日までにこれを終わらせる」という予定ができたことが意外に大きかったといいます。
最近では運動する曜日も決め、興味のあった講座にも通い始めました。
FIREに必要な資産額に、一律の正解はありません。生活費や運用方法、家族構成、将来必要になるお金によって大きく変わり、投資を続ける以上は市場変動のリスクも残ります。
同時に、早期退職の準備は資産額だけで完結するものでもないでしょう。仕事によって得ていた予定、人との接点、役割を手放したあと、その時間を何に使うのか。亮介さんにとってFIRE後の半年は、「働かなくても暮らせるか」と同じくらい、「働かない毎日をどう暮らすか」を考える時間になりました。
【関連記事】
■月20万円もらえるはずが…45歳・サラリーマン「ねんきん定期便」に抱いた違和感。「年金ルール」知らずにそのまま20年…65歳で受け取ることになる年金額に唖然「何かの間違いでは?」
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

