(※写真はイメージです/PIXTA)

住宅費や教育費、老後資金――将来を考えれば、家計を守るための節約は大切です。特に子育て中は、自分の楽しみを後回しにすることもあるでしょう。しかし、子どもが独立し、老後資金にも一定のめどが立ったあとまで、同じお金の使い方を続ける必要があるのでしょうか。長年の習慣は、暮らしが変わっても簡単には変えられないものです。

「お金はあっても、あのころには戻れない」70歳での気づき

帰宅後、和美さんは夫に友人との会話を話しました。

 

「私たち、ずっと老後のためって言ってきたよね」

 

夫は「そうだな」と答えました。

 

「でも、いつからが老後だったんだろう」

 

和美さん自身、老後資金を貯めたことを後悔しているわけではありません。住宅ローンを完済し、6,300万円の金融資産があるからこそ、この先の生活に安心感があります。

 

それでも、50代で断った海外旅行も、60代で見送った夫婦旅行も、「いつか行けばいい」と思っていました。

 

その「いつか」が来ても、当時とまったく同じように楽しめるわけではありません。

 

内閣府『令和7年版高齢社会白書』によると、健康上の問題で日常生活に制限なく過ごせる「健康寿命」は、2022年時点で男性72.57年、女性75.45年です。もちろん個人差が大きく、この年齢を超えれば自由に活動できなくなるという意味ではありません。それでも、年齢によってできることや楽しみ方が変わる可能性はあります。

 

「お金は残ったけど、50代だった私はもう戻ってこないんですよね。あのころ30万円使っても、今の生活が立ち行かなくなったとは思えない。節約することばかり考えて、使っていい時期まで逃していたのかなって」

 

内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』では、60歳以上が今後優先的にお金を使いたいものとして、「自分や配偶者等の医療・介護」が47.5%、「食費」が43.2%、「趣味やレジャー(旅行等)」も32.4%となっています。

 

和美さんはその後、急に財布のひもを緩めたわけではありません。

 

夫婦で家計を確認し、今後の生活費や住宅設備の交換などに備える資金は残す。そのうえで、毎年一定額を旅行や趣味に使うことにしました。

 

最初に予約したのは、夫と2泊3日で行く温泉旅行でした。

 

予約画面に表示された金額を見て、一瞬「高いな」と思ったものの、今回はキャンセルしませんでした。

 

「節約ばかりの人生でした。でも、貯めることが悪かったとは思っていません。ただ、貯める時期と使う時期を、自分で区切ってもよかったんですよね」

 

老後資金を十分に準備できたかどうかは、年金額や住まい、家族構成などによって異なります。将来の医療や介護を考えれば、一定の資産を残しておくことも重要です。

 

一方、お金は将来へ持ち越せても、その年齢で過ごせる時間まで貯めておくことはできません。将来への備えと現在の楽しみのどちらかを選ぶのではなく、何のために貯め、いつ、何に使うのかまで考えること。それも老後資金を準備するうえで必要な視点なのかもしれません。

 

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