「学費は払えるって言ったよ」母娘で違った100万円の意味
由美さんは説明しました。
もともと大学の学費を支払うためのお金は用意していた。ただ、入学前後の出費によって家計の余裕が少なくなっていたため、母から100万円を受け取ったことで、貯蓄を大きく減らさずに済んだ。その結果、以前から検討していた車の買い替えに踏み切ったというのです。
「学費はちゃんと払ってるよ。お母さんのお金で車を買ったわけじゃないから」
そう言われても、智子さんは納得できませんでした。
「私は孫の大学のお金が足りないと思ったから100万円出したの。車を買う余裕を作るためじゃないよ」
そこで由美さんも、「足りないとは言っていない」と反論しました。
振り返れば、確かに由美さんは「学費そのものは払える」と話しています。そのうえで「100万円くらい余裕があれば助かる」と言っていました。
智子さんはそれを、「大学関係の支払いに100万円不足している」という意味で受け取っていたのです。
一方の由美さんは、大学進学で減った家計の余裕を補ってもらう援助だと考えていました。同じ100万円でも、二人が想定していた使い道は違っていました。
税金の面でも、教育費としてお金を渡す場合には注意が必要です。
国税庁「贈与税がかからない場合」によると、親子や祖父母と孫など扶養義務者の間で、教育費として通常必要と認められる金銭を贈与した場合、原則として贈与税はかかりません。ただし、非課税となるのは教育費として必要な都度、直接その用途に充てるためのものです。教育費という名目で渡しても、そのまま預金したり別の用途に充てたりした場合には、この扱いにはなりません。
また、暦年課税では、1年間に贈与を受けた財産の合計額が基礎控除額の110万円を超える場合、原則として贈与税の申告が必要です。100万円だけなら110万円以下ですが、同じ年にほかの人から受けた贈与などがあれば、それらも含めて確認する必要があります。
智子さんは今回、100万円を返してもらうことまでは求めませんでした。ただし、由美さんには「今後まとまった援助をするときは、何にいくら必要なのかを先に聞く」と伝えました。
孫への支援をやめたいわけではありません。
「授業料があといくら必要とか、パソコンを買うからいくらとか、そういう話なら今後もできる範囲で出したい。でも『余裕がない』だけでは、もう100万円は出せないです」
由美さんも、母が何に対してお金を出そうとしているのかを確認しないまま受け取ったことについては、「説明が足りなかった」と認めたといいます。
家族間では、細かな条件を決めずにお金を渡すこともあるでしょう。しかし金額が大きくなれば、「何のためのお金なのか」という認識の違いが、その後の関係にも影響しかねません。
善意で援助するときほど、「いくら必要なのか」だけでなく、「何に使うのか」まで確認しておく。智子さんにとって今回の100万円は、家族だからこそ曖昧にしてはいけないことに気づくきっかけになりました。
【関連記事】
■月20万円もらえるはずが…45歳・サラリーマン「ねんきん定期便」に抱いた違和感。「年金ルール」知らずにそのまま20年…65歳で受け取ることになる年金額に唖然「何かの間違いでは?」
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

