(※写真はイメージです/PIXTA)

年齢を重ねると、長年暮らした戸建ての維持管理が負担になることがあります。庭の手入れや階段の上り下り、建物の修繕など、元気なうちはこなせても、今後も同じように続けられるとは限りません。まだ自分たちで動けるうちに、老後を見据えて住み替える夫婦もいます。

「何もしなくていい夏」は寂しいと思っていたけれど

引っ越して最初に驚いたのは、日常の細かな負担が減ったことでした。

 

ゴミはマンション内の決められた場所へ持っていけます。宅配便も宅配ボックスで受け取れ、共用部分の清掃や植栽の管理を自分たちでする必要もありません。

 

そして夏を迎え、隆夫さんは住み替えによる変化を改めて感じました。

 

以前なら梅雨が明けるころから、庭を見るたびに雑草の伸び具合が気になりました。「週末にやろう」と先送りすれば、その間にも草は伸びます。

 

ところが、今年はその予定がありません。

 

「もう草むしりの心配はありません。朝起きて、『今日は暑くなる前に庭をやらないと』と思わなくていいんです」

 

恵子さんも、台風が近づくたびに植木鉢を移動したり、庭の物が飛ばないか確認したりする必要がなくなりました。

 

もちろん、タワーマンションなら何の心配もないわけではありません。

 

毎月の管理費や修繕積立金は必要で、将来値上がりする可能性もあります。大規模修繕の計画や管理組合の運営状況なども、購入前に確認しておくべき点です。また、高層住宅では停電や災害時にエレベーターが使えなくなる場合もあるため、夫婦は飲料水や非常食などを自宅に備えています。

 

それでも二人が住み替えに求めていたのは、「高層階からの眺め」や豪華な共用施設ではありません。日々の買い物が徒歩で済み、庭や建物を自分たちで管理する作業から離れられることでした。

 

内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』では、住んでいる地域で不便・気になることとして「日常の買い物に不便」が23.9%、「医院や病院への通院に不便」が23.8%、「交通機関が高齢者には使いにくい、または整備されていない」が21.5%となっています。

 

夫婦は引っ越しを機に車も手放しました。

 

隆夫さんは午前中に歩いて図書館へ行き、恵子さんは駅前のスーパーへ買い物に出かけます。庭で育てていた花の代わりに、室内で小さな観葉植物を育てるようになりました。

 

「戸建てが嫌だったわけではありません。子どもたちを育てた家ですし、庭も好きでした。でも、好きだからといって、ずっと管理できるとは限らないですよね」

 

恵子さんはそう話します。

 

戸建てにもマンションにも、それぞれ負担や費用があります。タワーマンションへの住み替えが、すべての高齢者に適しているわけでもありません。

 

ただ、老後の住まいを考える際には、10年後も同じ管理や移動を続けられるかという視点も必要になります。

 

隆夫さん夫婦にとって今年の夏は、庭の草が伸びることを気にしなくていい初めての夏です。手放したものもありますが、二人が住み替えによって得たのは、これからできなくなるかもしれないことを心配し続けなくていい暮らしでした。

 

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