逮捕されるか否かの“あいまいな線引き”
「でも実際に逮捕されるんですか?」と聞かれたら、正直に言えば「多くの場合はそうならない」と答えるしかない。
この手の違反は、ほとんどの場合が「タレコミ」で動く。誰かが「あいつが怪しいことをしている」と通報し、担当した警察官が「これは事業性が高い」と判断すれば捜査が入る。熱血警察官に当たれば逮捕もあり得る。一方、誰もタレコミしなければ何も起きない。過去に捕まった人がいるのも事実だが、みんながみんなそうなるわけではない。
私はこれを「赤信号を渡っても、はねられるとは限らない」問題と呼んでいる。渡ってもクルマが止まってくれることが多い。でも、はねられることもある。担当する場所も違えば、担当する警察官も違う。「あの人は大丈夫だった」という事例が、自分の安全を保証しないのだ。
分筆だけでなく、「年に何度も」売却した場合も事業性ありと判断されうる
相続の場面ではもう一つ知っておくべきことがある。大きな資産を持つ人が、自分名義の不動産を年に何度も売却した場合も、「事業性がある」とみなされる可能性があるということだ。
自分がもとから持っているものを売っているだけなのに、という話だが、不動産の反復継続売買と判断されれば同じリスクがある。慎重な税理士の中には、「いくら自己所有の不動産でも、年に1件以上は売らないように」「間を2年以上空けるように」とアドバイスする人もいる。
「逮捕リスク」を避ける2つの方法
このリスクを回避するために、本来取るべき手段は2つだ。1つは、不動産会社に「分筆後の土地ごと全部買い取らせる」こと。業者が仕入れて、業者が販売する形にすれば、売主側に事業性は生じない。
もう1つは、売主自身が法人を設立して宅建業の免許を取得してから売る方法だ。手間はかかるが、免許を持った業者として売れば問題にならない(とはいえ、個人から法人への所有権移転が必要で不動産取得税も必要になるため、得策と言えるかは微妙)。
“形だけ”の「三為取引」は安全とは言い切れない
今回の不動産会社が提案した「三為取引」は、この事業性のリスクを避けるための形式として一応の理屈は通る。
しかし三為取引の場合、登記簿上は売主から直接エンドの買主に所有権が移る。業者が実際に買い取っていない以上、「不動産会社が分筆して売った」という形にはなっておらず、事業性回避の効果としては十分ではない。本来は業者が完全に買い取るべきだったが、不動産取得税などのコストを嫌ってこの形を使ったのだろう─―というのが、私の見立てだ。
相談者の男性は、最終的にこう言って帰っていった。「意外な話でびっくりしました。でも、正直に教えてもらえて安心しました」。
相続した不動産をどう処分するか。感情も絡み、登記の問題も絡み、法律の問題も絡む。その入り口で「とにかく売れればいい」という判断だけで動くと、知らないうちに法的なリスクを引き受けていることがある。せっかく手に入れた相続財産が、気づけば法的な地雷になっていた─―そういうことが、この国では起きている。
滝島 一統
株式会社光文堂インターナショナル
代表
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