今回は、フィルムメーカー、電子部品等の取引仲介で注目されている中国株を見ていきます。※本連載は、グローバルリンクアドバイザーズ株式会社の代表取締役、戸松信博氏が寄稿している『中国株二季報 2017年春号』(株式会社DZHフィナンシャルリサーチ)の中から一部を抜粋し、中国株ウォッチャーとして名高い著者が、中国市場において成長が期待できる注目銘柄をご紹介します。

体外診断用医薬品の販売で業績を伸ばす「巨星国際」

■巨星国際(02393)

巨星国際はもともと印画紙・フィルムのメーカーで、日本の富士フイルムと提携し、富士フイルム製や自社ブランド「Yes! Star」の印画紙やX線フィルムを販売しています。しかし、最近ではIVD(体外診断用医薬品)製品の販売に乗り出し、業績の成長ドライバーとなってきています。

 

IVD製品の販売事業は2014年11月に江蘇欧諾科技発展有限公司の株式70%を買収したことに始まります。この会社はIVDで世界をリードするスイス・ロシュ社(IVDにおいては中国で18%のシェアを持つ最大手。ちなみに中国の2番手は米国のベックマンの9%、3番手は日本のシスメックス(東証1部6869)の8%)及び米ベクトン・ディッキンソン社の製品を、江蘇省及び安徽省で販売する権利を有します。そしてさらに巨星国際は2015年8月にはロシュ社と米サーモフィッシャー社のIVD製品の上海における販売権を持つ、計5社の株式70%も同様に買収しています。

 

IVDは血糖値検査や病原体(HIVや肝炎等)の検出、妊娠の診断・判定等に利用されます(機材を導入し、一回ごとに薬品を利用します)。中国政府は医療費抑制のため、病院に売上に占める処方薬の割合を現在の40%から2017年までに30%まで下げるように指示を出しています。結果として、検査が重要になるため、IVDの需要は拡大しています。先進国で人口当たりのIVD消費は25米ドル以上ですが、中国では3米ドル以下に過ぎず、長期的に需要が大きく拡大する可能性があります。

 

おそらく同社は今後も他地域でIVD製品を販売している企業を買収する形で業績を伸ばしていくのではないかと思われます。次の買収の具体的な計画は立っていませんが、IVD製品販売企業は断片的なようですので、買収のチャンスも多いと思います。実際に買収で業績を伸ばしているだけに、買収による横展開で業績を拡大していける見通しのある同社は、リスクはありますが、その成長に期待出来る企業と思います。

電子商取引プラットフォームを運営する「科通芯城集団」

■<ランキング外銘柄>科通芯城集団(00400)

科通芯城集団はB2B向け(企業間取引)の電子商取引プラットフォーム「cogobuy.com」を運営します。2014年7月に新規上場し、時価総額は2500億円程度と急速に成長しています。取り扱う商品は電子機器メーカー向けの集積回路(IC)と電子部品に限定し、顧客の大半は中小企業です。2013年時点で中国には300万社を超える電子機器メーカーがあり、これらの間で2兆元もの部品調達が行われています。同社はここにeコマース業者として参入し、半導体・電子部品専門としては最大のシェアを持ちます。

 

取り扱う商品は異なりますが、日本のMonotaRO(東証1部3064)に近いイメージの会社と思います。MonotaROも中小企業を顧客に工業用間接資材を専門に販売するeコマース業者で、これまで高い成長を見せて来ました。科通芯城はすでに売上規模でMonotaROを2倍以上も上回ります。

 

ただ時価総額では3000億円のMonotaROより小さいものです。そして直近の株価パフォーマンスや成長スピードでは、科通芯城の方が上回ります。B2Bのマーケットプレイス運営はアリババなども行っています。ただ同社マーケットプレイスの販売手数料はアリババよりかなり低く抑えています。それだけでなく、同社はICと電子部品に特化し、販売先は中小企業に的を絞り、専門化しています。

 

中小の電子機器メーカーの部品調達は、ごく少数(一人の場合も)のキーパーソンが任されて独断で行っている事が多いものです。そしてそれは仕入れ専門担当というより、エンジニアやテクニカル・エキスパートが兼ねて行っていることが多いのです。同社はそうした技術者をターゲットに「INGDAN.com」というSNSサイトを立ち上げました。

 

「INGDAN.com」は技術者やベンチャー企業の集う場となり、16年第2四半期にはここから誘導された同社マーケットプレイスでの総取扱高が、全体の2割以上と、意味のある数字になってきました。無料で提供していた情報サイトが実際にお金を生み、収益貢献しはじめたのです。こうした専門機能を持つことが、アリババなどとの差別化に繋がると思われます。

 

利益率は低いものの、バランスシートにレバレッジを効かせ(適度な負債を抱える)、資産規模もコンパクトに抑えていることから資本回転率も高く、これらの効果によってROEは20%ほどもあります。電子機器メーカーの集積する中国で、同社のようなeコマース事業は有望と思います。成長の鍵を中小企業向けとし、IoTなど次世代の技術分野に注力している点も良いと思います。成長スピード、ROEも申し分ありませんが、期待先行で株価は時にプレミアム価格にまで買い進まれる傾向のある株です。できれば荒い値動きを利用し、相場の大きく下がったところ、PER20倍前後で仕込んでみたい銘柄と思います。

中国株二季報 2017年春号

中国株二季報 2017年春号

株式会社DZHフィナンシャルリサーチ編集

株式会社DZHフィナンシャルリサーチ

中国本土・香港の厳選666銘柄の最新詳細データに加え、巻末には香港全上場企業一覧を掲載しています。 巻頭ではテンセント、アリババによるIT業界の勢力争いを分かりやすく図にした「業界マップ」や、戸松信博氏、田代尚機氏…

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