今回は、中国株で成長が期待できる「自動車メーカー」「薬品販売会社」を見ていきます。※本連載は、2001年創刊で第31号となる『中国株二季報 2017年春号』(株式会社DZHフィナンシャルリサーチ)の中から一部を抜粋し、ファンダメンタル分析から「埋もれたグロース株」を発掘・ご紹介していきます。執筆者は、中国株ウォッチャーとしても知られる、グローバルリンクアドバイザーズ株式会社の代表取締役、戸松信博氏です。

ボルボがデザインした車の販売が好調な「吉利汽車」

前回の続きです。

 

■吉利汽車(00175)

吉利汽車は中国純国産の「吉利(GEELY)」ブランドで知られる民営自動車メーカーです。1998年創業で従業員数は18,700名、計683のディーラーを通じて、11種の主要モデルを販売します。2015年度に同社は51万台の自動車を販売しました。2016年は37%増となる70万台を目標にしているところです(もともとは66万台の目標を上方修正)。販売の約95%は中国国内向けで、一部新興国を中心に輸出もしています。

 

注目点は親会社が2010年にスウェーデンのボルボを買収し、現在生産やデザイン開発において両社は協業を深めている点です。2016年1-9月の累計販売台数は29%増の45万9041台となり、中国全体(乗用車)の14.8%増を大きく上回るペースで販売が進んでいます。販売が好調な理由は2016年に入りボルボがデザインした2つのSUVモデルが相次いで発売されたことです。人気車種は数カ月待ちの予約状況となっているほどです。

 

ちなみに吉利汽車の車は2015年にGC9(セダン)を発売したときからボルボのデザインとなっています。そして、その後にボルボデザインの車が2016年に続々と発売され、販売台数が伸びているところです。さらに同社は100億元を投じてボルボとの生産プラットフォームの共有化を図っており、2017年から稼働します。このプラットフォームでは電気自動車とガソリン車の両方を生産し、2020年までに新エネルギー車の販売比率を90%とする計画を立てています。

 

また、ファイナンス面においてはフランスのBNPパリバ銀行と自動車ローンの共同出資会社を上海に設立し(吉利汽車が80%を出資)、1-2級都市を中心に消費者の購買を促して行く予定です。

 

バランスシートは健全で、キャッシュフローも安定しており、持続的な成長に向けて利益を事業投資に繋げています。長期的には新エネルギー車の開発に重点を置き、ボルボとの協業でデザインやコスト圧縮で成果を高めて行きます。株価は堅調に上昇しており、高値を追うような買い方は好ましくありませんが、次に調整した安値は長期的な買い好機になると思います。

有利な条件の長期独占販売契約獲得を狙う「康哲薬業」

■康哲薬業(00867)

中国の医薬品販売会社です。主に独占販売契約を結んだ医薬品を中国の病院向けに販売します。優れた薬を国内外から素早く探し出し、有利な条件で長期独占販売契約を獲得するマーケティング力と販売ネットワークに強みがあります。いわば商社的な医薬企業と言えるでしょう。

 

特に数年かけて構築された営業ネットワークがキーポイントです。2300人で2万以上の病院をカバーしていますが、営業人員は医薬品に対しての教育を受けており、医者に対して販売する薬の何が優れているのかを直接伝えて啓蒙する形で営業を行っていきます。この強い営業力が他社との差別化につながっています。

 

2016年第1四半期にはアストラゼネカから高血圧の薬である波依定(Plendil)の中国における20年間の独占販売権利(3億1000万ドル)と和依姆多(Imdur)の米国以外の世界販売権(子会社が1億9000万ドルで)を獲得しました。高血圧患者は中国では3億人を超えており、波依定は高血圧に効くカルシウム拮抗薬の中で42%の世界シェアを持っている製品ですが、中国では2%のシェアしかなく今後の成長余地が大きくあります。

 

一方、冠動脈心疾患薬である和依姆多も同分野では世界で3本の指に入る薬で、米国以外の世界売上は5700万米ドルに達しますが、同社は同薬の販売網に併せて同社が権利を保有する他の薬を売り込む計画です。

 

2つの薬は共に10億元以上の売上を目指すことが可能とみられます。その他、2015年に発売した丹参酮(Dan-shen)、諾迪康(Nuodikang)といった薬も堅調に伸びており、将来的には共に年間10億元の売上を目指せる薬となる可能性があります。

 

長期的には、現在臨床試験中の薬で急性上気道感染薬のTraumakine(第IIIa相臨床試験を欧州で実施中)と抗ガン剤のCMS024(中国で第IIb相臨床試験まで終了)に期待がかかるところです。臨床試験は第III相までたどり着けても発売までたどり着ける可能性はようやく50%程度ですからどうなるかわかりませんが、開発に成功すれば大きな収益源となる可能性があります。

 

多くの製薬会社が影響を受けている、中国政府が行っている医療費削減に伴う、医薬品の入札仕入れ制度による単価下落について、経営陣は2016年の平均単価の下落幅は5-10%になるだろうとの予想を立てています。そして、実際のところ主力薬は5%程度の価格下落となっている様子で、概ね予想通り穏やかな価格下落で済んでいる印象です。同社の場合、競争力がある薬であるため、価格下落の影響は限定的であるようです。

中国株二季報 2017年春号

中国株二季報 2017年春号

株式会社DZHフィナンシャルリサーチ編集

株式会社DZHフィナンシャルリサーチ

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