非常に高いROEが特徴の「耐世特汽車」
■耐世特汽車(01316)
ステアリングとドライブライン(駆動力をタイヤに伝えるシステム)などの自動車部品を手がける企業です。米GM傘下の部品メーカーでしたが、2010年に中国企業が買収。中国資本となった今も本社は米国にあるほか、北米の売上が65%を占め、GMを筆頭に米ビッグスリーやトヨタが主要顧客です。
主要製品であるステアリング系統の部品は、日本のジェイテクト、日本精工などの方が大手ですが、世界4位の同社は北米で強みを持ち、世界でも市場シェアを拡大させている模様です。特に旧親会社だったGMとの繋がりは絶大な様子です。GMからの受注は北米のみならず、中国での合弁事業を通じて中国やASEAN地域にも広がります。また、無人運転時代を見据え、先進運転補助システム(アドバンスト・ドライバー・アシスタンス・システム=ADAS)の開発に10年前より力を注いでいる会社です。
利益率の水準自体は高くありませんが、年々改善してきています。そして利益率が低くとも、非常に高いROEを持っていることが最大の特徴です。2015年のROEは1.4ポイント向上して27.2%に達しました。今期は29%を超える見込みです。これほど高いROEを持つ企業は(特に製造業では)なかなかありませんが、それはコンパクトなバランスシートと、適度に負債レバレッジを効かせている資本構成によって達成されています。つまり資本の回転効率が非常に良いことにあり、ROEが高ければ、利益率が低くても問題ありません。
2016年上半期は世界的に自動車生産が堅調に推移し、同社は市場を上回る伸びを見せました。利益率も改善し、売上の伸び以上に大幅な増益を達成しました。2016年下半期から2017年にかけては、世界の自動車産業も多少スローダウンする可能性ありますが、同社は豊富な受注残を抱えていることが明らかとなっており、長期的な成長を期待できます。
金属筐体需要の高まりで業績が好調な「通達集団」
■通達集団(00698)
スマートフォンなどのハンドセット、ノートPC、及び家電製品などの筐体を製造します。そのほか金属部品(アルミなどの精密金属部品)や通信機器等の部品(レシーバーなど)も製造します。売上の8割近くは筐体であり、なかでもスマートフォン向けが圧倒的で、最も伸びている分野です。そして筐体の中でもプラスチック製から金属製へと材質が変化しており、金属筐体需要の高まりが同社の業績を一層押し上げてきているところです。
現在のところアップルは顧客ではないのですが、米国のスマートフォンメーカーにOリングや液体シリコンゴムなどの防水部品を出荷するとしており(これがアップルの可能性がある)、関連銘柄として認知されています。
現在、通達集団は中国のスマホメーカーである華為と小米のメタルケースでは20-30%のシェアを、OPPOでは5-10%のシェアを占めています。華為とOPPOは中国のスマートフォン市場で約3割のシェアを占めています。
この2つのメーカーは最先端技術を駆使した製品を低価格で提供している点に強みがあります。たとえば、2016年第4四半期にOPPOから発売される機種は15分での急速充電が可能です。通達集団の経営陣はOPPOにおけるメタルケースのシェアを現在の5-10%から2016年下半期には20-25%まで拡大できると見ています。
一方で、華為のハイエンドモデルのケースも提供する見通しです。これらのことは平均販売単価を押し上げ、経営陣は下がっていた単価について、2016年上半期の85元/個から下半期には100元/個まで戻ると予想しています。
他方、サムスンやOPPO、小米の最新機種のケースには曲面ガラス(3Dガラス)が使われています。もしもiPhone8でこれが採用されれば、他のメーカーも追随する動きになり2017-18年に一気に3Dガラスの普及が高まる可能性があります。市場ではこれによってメタルケースの需要が減退し、利益率も悪化するのではないかとの懸念がありますが、通達集団の経営陣はこれを否定。通達集団は新世代の曲面ガラス(3Dガラス)ケースを開発中であり、2017年第2-3四半期に発売予定とのこと。経営陣によるとこの3Dガラスケースは、単価が200元以上となり、粗利益率は約30%になると予想しています。
携帯以外では自動車用の内装品の生産を開始しており、2016年通期では1億HKドル、2017年は2億HKドル、2020年には5億HKドルまで売上が拡大すると経営陣は見ています。
設備投資資金の調達のため、借入金が増えていますが、バランスシートは十分健全です。利払い費用も僅かなものでしかありません。ROEが20%に近づく中で、PERが10倍前後であり、株価は割安にも見えます。成長性も高く、他の財務内容も良好です。