「1,500万円ずつキッチリ折半よ」49歳妹の反論
「『介護の苦労』と『遺産の分け方』は別問題よ。介護はどうせ誰かが負担しなきゃいけなかったんだし、お兄ちゃんたちが好きでやったことでしょ? 法律どおり、1,500万円ずつキッチリ折半するべきよ」
「俺たちがどれだけ苦労したと思っているんだ!」と怒りの感情をあらわにするAさんに対して、妹も「法律上の権利を主張しているだけ」と一切譲りません。
話し合いは平行線をたどり、その日結論は出ませんでした。結局、当事者間での話し合いは不可能な状態となり、妹側は弁護士を立てて家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる事態となりました。
かつては仲がよかった兄妹の関係は、遺産分割をめぐり崩壊してしまったのです。
普通の家庭ほど、「争続」に発展しやすい
法律上の寄与分のハードルの高さや両者の感情的な溝の深さを考えると、調停は不成立に終わり、Aさんたちは審判(裁判)へと移行した可能性が高いといえます。
遺産がそこまで多くないご家庭は、「うちは資産家ではないからトラブルにはならない」「家族仲がいいから話し合えばわかる」と考えている方も多いですが、実はこうした家庭ほど注意が必要です。
「司法統計(令和4年 遺産分割事件)」によると、家庭裁判所で成立した遺産分割調停・審判のうち、遺産価額「5,000万円以下」の割合が全体の約77%を占めているのです。さらに「1,000万円以下」に限っても全体の約32%(およそ3件に1件)にのぼります。
不動産(実家)が資産の大半を占め、預貯金が少ない「普通の家庭」ほど、物理的に均等分割がしづらいため、争いに発展しやすいのです。
裁判で“介護の寄与分”が認められない現実
法律上、介護などの貢献は「寄与分(民法第904条の2)」として認められる可能性がありますが、裁判実務において認められるハードルは高くなっています。
過去の判例をみても、長年同居して親の介護を行った相続人の寄与分主張に対し、裁判所は「親族間の扶養義務の範囲内」として退けるか、認められたとしても「介護ヘルパーを雇った場合の費用実費換算」など、わずかな金額にとどまるケースが大半です。
つまり、裁判という「法律の場」に持ち込んでも、介護した側の心身の負担は解決しないばかりか、弁護士費用や精神的負担で余計に消耗してしまうのが現実です。
