前回は、「経営理念」を明文化し、後継者と共有することの重要性について説明しました。今回は、創業時の経営理念や現経営理念が社内に浸透しているか、確認すべき理由を見ていきます。

初代が掲げた経営理念が、今も活かされているか?

ここで現在の経営理念が、そもそもどのように出来上がってきたものかを振り返ってみるのも有益です。

 

現経営者が創業者であれば、事業を立ち上げる大本になった動機が、経営理念の中に含まれているはずです。その理念に則り、ここまで会社を経営し、あるいは大きくしてきたわけですから、会社の歴史には常にこの理念が併走していたと言えます。

 

現経営者が2代目以降である場合であれば、初代が掲げた経営理念が今のものに活かされているかどうかを考えてみることになります。代が替わるごとに、新たな経営者による新たな経営理念が掲げられ変化していくなかで、初代から受け継がれて脈々と根づいているものはないでしょうか。

 

変えるものと変えないものを見極める――当たり前のことですが、ここでもそれが大きな鍵となるのです。

経営理念を社内に浸透させることで、一体感を強める

さらに、もうひとつここで考えておきたいことがあります。それは、これまで引き継がれてきた経営理念を含めた現経営理念を、現在の幹部社員や従業員が理解し、それに基づいた業務を行っているかどうかです。

 

経営者や幹部社員だけでなく、業務に携わる一人ひとりの従業員までがこの経営理念を基盤としているようであれば、会社全体が同じ方向を向いていることになります。これは経営をしていく上で、会社との一体感を強めるとともに目指す目的への求心力を高める、非常に大事な点なのです。

 

いい機会ですから、幹部社員や従業員に経営理念を理解し、日々意識しているかどうかを聞いてみるのもよいでしょう。その結果、もし経営理念が浸透していなかったとすれば、それは経営者側の問題が大きいと言って間違いありません。

 

経営理念が適切でない、あるいは従業員の理解を得られるものではなかったという、内容的な問題はどうか。もしくは経営理念を周知徹底させるための行動を疎かにしていたのではないか。大まかにでも明文化しておくべきだったのではないか・・・こうした各種の振り返りができるはずです。

 

後継者が同じ轍を踏まぬためにも、経営理念をどうやって周知させ、浸透させていくのか、現状を参考にして十分に話し合う必要があるといえます。

本連載は、2016年6月24日刊行の書籍『たった1年で会社をわが子に引き継ぐ方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

たった1年で会社を わが子に引き継ぐ方法

たった1年で会社を わが子に引き継ぐ方法

浅野 佳史

幻冬舎メディアコンサルティング

近年、日本の多くの中小企業が承継のタイミングを迎えています。承継にあたっては、親から子へと会社を引き継ぐパターンが多いのですが、親子間だからこそ起こるトラブルがあることを忘れてはいけません。 中小企業白書による…

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