クラウド普及の裏に潜む「一部導入のみ」の実態
データの保管や利用などをインターネット上で行う「クラウド」は、日本でも一般的になったとされる。しかし、実際にはクラウドの導入が一部の業務や事業所にとどまっている企業も少なくない。情報流出などセキュリティ面の不安や、システム変更に伴うコスト増が経営上の障壁となっている。
クラウドは高度なAI(人工知能)を活用する基盤となるだけに、普及が進まなければ、企業の業務効率化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れにつながる懸念がある。
「表面的普及」と「本格移行」の間に存在するギャップ
日本でクラウド化が進んでいるとされる背景には、統計上の「定義」の違いがある。 2025年版の「情報通信白書」によると、2024年時点でクラウドを「全社的に利用している」とした企業は53.1%、「一部の事業所または部門で利用している」は27.6%となり、合計で8割以上の企業が何らかのクラウドを利用している。
しかし、ここでの「利用」にはメール機能やファイル共有といった部分的なSaaS利用も多く含まれる。業務の根幹を支える基幹システムまでを含め、自社サーバーからクラウドへ本格移行している企業は決して多くないのが実態だ。
基幹システムの全面移行は3割、情報流出などに懸念
そうした「本格的なクラウド移行」の停滞を示したのが、クラウド構築支援を手掛けるFIXERが2026年2月に実施したアンケート調査だ。同社が全国の従業員300人以上の企業の経営者・管理職800件から得た回答によると、クラウドサービスを本格的に導入している企業は31.4%にとどまった。「一部導入」の14.0%を合わせても、合計で半分弱に過ぎない。多くの業務が依然としてオンプレミス(自社保有)のシステム上で稼働している状況が浮き彫りとなっている。
「導入していない」と回答した企業に理由(複数回答)を聞いたところ、最も多かったのは「導入や移行のコスト増」(25.9%)、次いで「情報セキュリティ上の懸念」(16.1%)となった。生成AIに入力した機密情報の漏洩や、不正アクセスを恐れる声のほか、「扱える技術者の不足」(15.4%)や「既存システムとの連携困難」(8.4%)も大きなハードルとなっている。
従来、AI活用には専用ハードウェア等の多額な初期投資が必要だったが、従量課金制のクラウドを活用すれば中期的なコストを抑えて最新AIを導入できるメリットがある。単なる「部分利用」から一歩踏み出し、AI基盤としての「本格的なクラウド環境整備」を進められるかが、日本企業の生産性を左右することになりそうだ。
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