「私たちの予定は、いつなら立てられるの?」
状況が変わったのは、それから3ヵ月ほど経ったころです。美智子さんが友人との日帰り旅行を予定していた日、隆さんからこう頼まれました。
「母さんのところ、一緒に行ってくれない? 最近、食事もちゃんとできているか心配で」
「明日は友達と出かけるって言ったよね」
「じゃあ別の日でもいいけど……」
美智子さんはしばらく黙ったあと、言いました。
「あなたがお母さんを心配するのは分かる。でも、退職したら私たちにも時間ができると思ってた。私たちの予定は、いつなら立てられるの?」
隆さんはそこで初めて、母への対応が夫婦二人の生活にも影響していることに気づきました。母からいつ連絡が来るか分からず、旅行だけでなく外食や友人との約束まで避けるようになっていたのです。
そこで兄妹にも相談し、地域包括支援センターへ連絡。芳江さん本人とも話し合い、介護保険の申請を進めることにしました。
認定後は、必要な支援についてケアマネジャーと相談。買い物など一部の家事について外部のサービスを利用するようになり、隆さんが毎回駆けつけなくても済む場面が増えていきました。
現在、隆さんは実家を週1回程度訪れています。芳江さんから電話があっても、急ぎでなければ「次に行く日にやろう」と伝えられるようになりました。
一度キャンセルした北海道旅行も、半年後に改めて予約しました。
親が高齢になれば、子ども世代が生活を支える場面は増えていきます。しかし、家族だけで対応し続ければ、仕事や夫婦の予定、自分たち自身の老後生活に影響が及ぶこともあります。親の生活に変化が見え始めた段階で、家族の役割分担や利用できる支援について話し合っておくことが大切です。
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