前回は、自宅を社宅扱いにした減価償却や、生命保険を法人契約にして経費で落とす方法について解説しました。今回は、死亡保険金を法人税の課税対象から外す方法などを見ていきます。

死亡保険金を退職金にすれば、法人税はかからない

もしも被保険者が亡くなって保険金が法人に支払われたら、どうしたらいいのでしょうか。

 

課税対象でなくさせるためには、それを死亡退職金として遺族に支払うことです。法人に1000万円の保険金が支払われると、その1000万円には法人税がかかります。しかし、死亡退職金という形で払ってしまえば、経費となって差し引きゼロ。法人税はかかりません。

 

一方、遺族はその死亡退職金を相続税の納税にあてられます。退職金には法定相続人1人当たり500万円の非課税枠がありますから、配偶者と子が1人いれば500万円×2人で1000万円がまるまる非課税になります。

 

ただし、過大退職金はNGとなって経費にはできません。「過大」についての税法上の明記はありませんが、適正な役員退職金は、「役員の最終月額報酬×在任年数×功績倍率※」の算式で一応表現されています(※功績倍率は2.5〜3.0が無難とされています。この倍率を無難とする法律や通達の根拠はありません。判例の積み重ねの中で、基準値として確立してきたものです)。

地方ではやはり目立つ「1億円の退職金」

ただ、実際の実務では、法人の決算書を税務署職員が見た時に、目立つか目立たないかが重要なポイントです。

 

税務署では1件ずつ算式に当てはめて「適正な退職金かどうか」をチェックするわけではありません。そもそも役員の最終月額報酬や在任年数は、決算書からはわからないからです。周りの他の法人の退職金と比べて高額だと「あれ? なぜこの人はこんなに退職金をもらっているんだろう」と目立ってしまいますが、他とかけ離れていなければ、目に留まる確率はそう高くないと思います。

 

ここまでいうと税務署から怒られそうですが、地方の税務署では1億円の退職金は目立ちます。たいてい数百万円から、最大でも数千万円の人が多いからです。しかし、都心の税務署なら目立ちません。大きな会社が多いので、1億円や2億円の退職金など珍しくもないのです。

 

断っておきますが、私は「過大な退職金でもバレなければOK。どんどん払え」と、そそのかしているのではありません。実際には過大ではないのに、額が大きいがゆえに変に目立ってしまっては、税務調査の対象になるなど手間が増えることもあるので、注意を喚起したいのです。

 

なお、退職金に加え、弔慰金が支給される場合もあるでしょう。この場合、弔慰金が明らかに退職金に該当するものでなければ、これについても非課税の枠が用意されています。業務上の死亡の場合、死亡時の賞与以外の普通給与の3年分、業務上の死亡でない場合は、半年分で、これらも有効に活用したいところです。

本連載は、2011年8月29日刊行の書籍『相続財産は法人化で残しなさい』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続財産は法人化で残しなさい

相続財産は法人化で残しなさい

阿藤 芳明

幻冬舎メディアコンサルティング

日本の税制は、今、法人の税負担を軽くして企業の動きを高め、その代わりに個人の資産家から税収を得る方向へ動き出しつつあります。まさに資産家いじめの税制が訪れようとしているのです。 そのような中、相続財産の中でも約…

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