納税資金の捻出以外にも多数のメリットが・・・
土地を売却して納税資金にできるというメリットと、またその方法は前述したとおりですが、他にも知っていただきたいメリットがあるので、ここでまとめておきます。土地を法人に売却することのメリットは、主に次の5点が考えられるのです。
【メリット1】
法人が銀行から土地代金を借り入れすることで、その利息を会社の経費にできます。
【メリット2】
法人から土地代金を支払われた相続人は、それを相続税の納税資金にあてられます。
【メリット3】
土地が収益を生まない遊休地であった場合、個人で支払う固定資産税は経費にできませんが、法人所有にすれば遊休地であっても経費扱いにできます。
【メリット4】
土地を個人で持っていると相続のたびに所有者が替わり、その都度、登記のための手間と費用(登録免許税)がかかります。しかし、法人に売却してしまえば、所有者はずっと法人のままですから一度きりで済みます。
【メリット5】
法人が土地を買換える時には、時限立法ですが「特定資産の買換え特例」が使えることもあります。これを簡単に説明すると、低収益で有効活用できない土地を売却し、立地条件のいい高収益物件に組替えた場合などに、譲渡益について譲渡収入(買換え金額)の80%までは課税が繰延べられるというものです。この特例は個人でも使えますが、個人では事業用かそうでないかの区別が曖昧になりがちで、税務署に否認される恐れがあります。一方、法人の場合はもれなく対象となるので安心です。
収支予想が立てやすい不動産賃貸業の特性を生かす
八百屋さんや魚屋さんのようにモノを仕入れて売る商売は、その時々で売上げや仕入れ値が変動しますが、不動産賃貸業の場合は、月々の入ってくる収入(家賃)も出ていく支出(経費)も概ね内容や金額も決まっていて、簡単に把握できます。これは不動産賃貸業ならではのメリットだといえます。
では、なぜメリットになり得るのか? それは法人化後に払うべき法人税もかからないようにできるからです。ここで一番のポイントとなるのは家賃収入-諸経費を計算すれば、会社の利益の予想がつきやすいということです。法人税は会社の利益にかかってきますから、これを小さくすれば、それだけ法人税も小さくなります。
たとえば、家賃収入が1000万円、諸経費が300万円なら利益は700万円です。この700万円を親族の役員報酬として支払ってしまえば、差し引きゼロで法人税はかかりません。
ただし、その役員報酬には所得税などがかかります。
従って、なるべく複数の役員で分けて、各人の所得税などを低くしようというのが、本書で勧める法人化の基本の考え方です。「基本の」といったのは、最近、法人税は税率が下がって税額が安くなる傾向にあるからです。
この流れが今後も続き、今よりもっと法人税が安くなれば、所得税で払うより法人税で払った方が、負担額が小さくなる可能性はあります。しかし、当面であれば所得を分散させて所得税で納めた方が、負担額が小さいという意味で、「基本の」というわけです。