自宅を社宅にすれば「減価償却」の活用も可能に
法人化した後、「役員の自宅を社宅にする」ことで、経費の対象が増え、さらに税金を減らすことができます。「えっ!」と驚かれたのではないでしょうか? 誰もが憧れる〝夢のマイホーム〞なのに、わざわざ社宅にするなんて・・・とお思いでしょう。しかし、しっかりした理由と勝算があります。
まずは、役員の自宅の建物を法人に売却します。例によって、譲渡税が生じないよう建物だけを帳簿価格で売却し、土地までは移転させません。そうすると、建物がまるまる減価償却資産となり、耐用年数に応じて費用として差し引けるようになるのです。つまり個人で持っているよりも、支払う税金を減らすことができるのです。
ただし、あくまで社宅になったわけですからタダで住むわけにはいきません。最低限の家賃は払うことになりますが、その家賃を所得税の通達の規定にしたがって計算すると、市場価格をかなり下回る超格安価格になることも多いのです。役員が新築で家を建てる時も、法人名義にすれば同様のメリットが受けられます。「でも、それだと個人の所得税の計算の時に、住宅ローン控除を受けられないのでは」という声が上がりそうですが、心配には及びません。
住宅ローン控除は平成23年現在、年末のローン残額の1%で、1年に最大40万円までが限度です。それが10年間ですから控除できても400万円です。それに比べて、減価償却を適用すれば、建物価格の全部ですので1桁も2桁も単位が違ってきます。何だか変な話ですが、これが実務なのです。
ローンの話がでてきたついでに、個人と法人でこんなにも法人が得だという話を1つしておきましょう。
たとえば、月100万円の給与収入のある人がいたとします。個人の所得については、収入100万円に対して所得税や住民税などがかかります。いろいろ差し引かれて、手取りは70万円だったとします。
この人が500万円の自動車を分割で買ったら、月々70万円の中から分割で払っていくことになります。ローンの元利はもちろん70万円の中からの負担です。
ところが、法人が同じ500万円の自動車を買うと、どうなるでしょうか?
車は6年で減価償却します。減価償却分は経費となります。ローンで買うにしてもその金利は経費です。個人の場合は収入そのものから先に税金を引かれるので「税引き後の現金」ですが、法人の場合は経費などを引いた後の利益に税金がかかるので「税引き前の現金」で計算ができるのです。つまり、個人は税金などを支払った後の残額で生活費などをまかなわなければなりません。
これに対し法人は、様々な経費を引いた残りに税金が課税されるため、極端な話をすれば、欲しいものを欲しいだけ買って経費が増えれば、税金を納めなくてもいいケースがでてくるのです。
毎月かさむ生命保険料、法人名契約なら経費化OK
実は生命保険料も、法人で契約すれば会社の経費にすることが可能です。家計の支出の中で、住宅ローンに次いで大きな割合を占めているのが、生命保険料だという方も多いでしょう。そういった方は、これを使わない手はありません。
みなさんは万が一に備えて、生命保険料を毎月何万円も支払ってしまっているのではありませんか? 個人で生命保険に加入すると、個人年金の部分の控除と合わせても年間、最大で10万円しか生命保険料控除が受けられません。保険料が100万円でも1000万円でも10万円しか引けないのです。
それが法人になると、保険料の全額もしくは1/2、1/4が経費として認められます。全額になるか1/2、1/4になるかは、保険の種類で決まっています。保険料自体の制限はないので、経費にできる金額の限度は、資金繰りとの相談だけということでしょうか。
1/2タイプであれば、保険料100万円のうち50万円が経費となり、残りの50万円は保険積立金として扱われます。積立金とは、要するに貯金のことです。
保険が満期になって100万円が支払われたら、いわば貯金が戻ってきただけですので、その1/2にあたる積立金50万円に法人税は課税されません。
法人で生命保険に入る場合は、まず、契約者を法人にする必要があります。もちろん契約者が保険料を負担します。被保険者は役員にし、受取人は法人にしておきます。被保険者が契約に定められた病気や怪我、あるいは死亡した場合に、保険金が支払われることになります。