トランプ氏も活用した「赤字の資産価値」――アメリカ富裕層の節税術と日本との決定的な違い【国際税理士が解説】

トランプ氏も活用した「赤字の資産価値」――アメリカ富裕層の節税術と日本との決定的な違い【国際税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「巨額の資産を持ちながら、なぜ税金をほとんど払わずに済むのか…」。アメリカの富裕層を巡る議論で、たびたび注目されるテーマだ。その象徴として語られるのが、ドナルド・トランプ大統領です。過去には不動産事業で生じた巨額損失を活用し、長期間にわたって税負担を抑えていたと報じられたことがあります。日本では「赤字=失敗」というイメージが強いですが、米国では赤字は将来の税金を減らす“資産”として扱われることがあります。この考え方の違いこそが、日米の税制や富裕層の資産形成に大きな差を生み出しています。本稿では、『トランプ劇場と超富裕層課税 増税か、減税か——税制が映し出すアメリカの真実』を刊行した奥村眞吾税理士が詳しく解説します。

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トランプ氏の節税は違法ではなかった

トランプ氏の納税状況が大きな話題となったのは、過去に公開された税務資料や報道がきっかけでした。

 

報道によれば、トランプ氏は1990年代の不動産事業で巨額の損失を計上し、その損失を税務上活用することで、その後の税負担を大幅に軽減していたとされています。

 

「大富豪なのに税金を払っていない」と批判する声もありましたが、問題となったのは違法な脱税ではありませんでした。税法が認める制度をどのように利用していたのかという点です。

 

実は、この仕組みは米国では決して珍しいものではありません。むしろ事業家や不動産投資家にとっては一般的な税務戦略の一つであり、トランプ氏はその象徴的な事例として語られているのです。

日本では「赤字は損失」、米国では「将来の資産」

税務には「繰越欠損金」という制度があります。

 

たとえば事業で1,000万円の赤字が発生し、翌年に700万円の利益が出た場合、その利益と前年の赤字を相殺することができます。それにより課税所得はゼロとなり、税金も発生しません。

 

ここまでは日本も米国も同じです。

 

しかし、その考え方には大きな違いがあります。日本では赤字はあくまで救済措置の対象であり、「損をした人への配慮」という側面が強い制度です。

 

一方、米国では赤字を将来の利益と相殺できる経済的価値として捉える傾向があります。つまり、赤字そのものが税務上の資産として認識されているのです。

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