トランプ氏も活用した「赤字の資産価値」――アメリカ富裕層の節税術と日本との決定的な違い【国際税理士が解説】

トランプ氏も活用した「赤字の資産価値」――アメリカ富裕層の節税術と日本との決定的な違い【国際税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「巨額の資産を持ちながら、なぜ税金をほとんど払わずに済むのか…」。アメリカの富裕層を巡る議論で、たびたび注目されるテーマだ。その象徴として語られるのが、ドナルド・トランプ大統領です。過去には不動産事業で生じた巨額損失を活用し、長期間にわたって税負担を抑えていたと報じられたことがあります。日本では「赤字=失敗」というイメージが強いですが、米国では赤字は将来の税金を減らす“資産”として扱われることがあります。この考え方の違いこそが、日米の税制や富裕層の資産形成に大きな差を生み出しています。本稿では、『トランプ劇場と超富裕層課税 増税か、減税か——税制が映し出すアメリカの真実』を刊行した奥村眞吾税理士が詳しく解説します。

当時のトランプ氏を巡る本当の論点

トランプ氏の税金問題が米国社会で大きな注目を集めた理由は、単に「どれだけ税金を払ったのか」という話ではありませんでした。

 

むしろ議論の中心にあったのは、資産や利害関係の透明性です。トランプ氏は不動産事業を中心に幅広い事業を展開しており、どのような資産を保有しているのか、どのような企業や投資家と取引しているのかが常に関心の対象となってきました。

 

特に大統領という立場に就いている以上、その判断に私的な利害関係が影響しないのかという点は、米国社会にとって重要なテーマです。合法的な節税を行っていたかどうか以上に、どのような資産を持ち、どのような利害関係を抱えているのかという「透明性」が問われたのです。

 

日本では税金の多寡そのものが話題になりがちですが、米国では公職者の利益相反や説明責任に対する関心が比較的強いと言えるでしょう。

税制はその国の価値観を映す鏡

日本とアメリカの価値観の違いが表れています。日本では赤字は「失敗の結果」と受け止められることが少なくありません。一方で米国では、事業上の失敗によって生じた損失であっても、将来の成功につながる挑戦のコストとして評価する考え方があります。

 

もちろん、どちらが正しいという話ではありません。しかし、税制にはその国が何を重視しているのかが色濃く反映されます。日本が安定や公平性を重視する傾向にあるのに対し、米国は挑戦や再チャレンジを後押しする仕組みを重視してきたと言えるでしょう。

 

「失敗した人に再びチャンスを与えるべきか」「挑戦をどこまで支援するべきか」という、より大きな社会の価値観を映し出しているように思います。

 

奥村 眞吾
税理士法人奥村会計事務所
代表

 

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