3.インフレ以上に恐ろしい「時間切れ」の罠
インフレよりも、もっと恐ろしく、取り返しのつかないリスク。それが「時間切れ」だ。
NISA戦略の最大の欠点は、最終的な結果が分かるのが数十年後だということである。あなたが60歳になり、自分の資産額を見て「これでは足りなかった」「もっと違うやり方があったのではないか」と後悔したとしても、もう手遅れなのだ。人生をやり直すための気力も、体力も、そして時間も、そこには残されていない。
あなたは「普通の老後」を手に入れるために、人生のすべてを懸けている。これ以上に危険な賭けが、他にあるだろうか?
東大卒ニートの意識を変えた「妻の妊娠」
「じゃあ、一体どうすればいいんだ!」
そんなあなたの、悲痛な叫びが聞こえるようだ。だが、安心してほしい。私も、おそらくあなたよりも悲惨な場所にいたのだから。
信じられないかもしれないが、私は東大を卒業したにもかかわらず、就職活動すらしなかった。なぜなら、学生時代、親からの仕送り5万円だけで、家賃込み3万5000円で生活し、余った1万5000円で月に20本も映画館で映画を観るという、なんとも文化的な生活が完成してしまっていたからだ。就職してフルタイムで働く意味が、本気で分からなかったのである。
そのまま就職活動をすることなくうっかり大学を卒業してしまい、当然のようにニートとなってしまったが、やがて時給1000円のアルバイトを始めた。幸いにもそこで正社員になったが、年収は300万円ほど。それでも一人で生きていくには十分な収入で、特に不満もなかった。
そんな私の人生に、転機が訪れる。結婚していた妻の妊娠だ。この瞬間、私の人生というゲームのルールが、根本から書き換わった。「自分一人が食えればいい」というイージーモードから、「家族を守り、豊かにする」という、途方もないハードモードへの強制的なステージアップだ。しかし、私は絶望しなかった。むしろ、こう思った。「面白い。やってやろうじゃないか」と。
そして、明確な目標を立てた。「不動産投資家になって、自由で文化的な生活と家族を守り豊かにすることを両立させる」と。
しかし年収も低く資産もなく、不動産投資などできようはずもない。そこでまずは不動産業界に転職を試みることにした。属性を上げると同時に不動産の知識・経験を身につけるという一石二鳥を狙ったのである。
しかし当時、二十代も後半にさしかかって業界の経験がないとなると、望んだ転職ができるか不安があった。そこでまずは武器を身につけるため、不動産鑑定士の資格を取ろうと決意した。そして、会社を辞めた。受験勉強に専念するために。世間から見れば、それは「無職の子持ち」という無謀の極みだ。
だが、当の本人は、これから始まる大逆転劇のプロローグに胸を躍らせ、意気揚々と未来を見据えていた。
NISAを続けながら、自己流で資産を増やす速度を加速させる
誤解しないでほしい。私は、あなたにNISAをやめろと言っているのではない。NISAは素晴らしい制度だ。ぜひ、これからも続けるべきである。
しかし、もう一度、心の奥底に問いかけてほしい。「NISAだけで、本当に満足なのか?」
「NISAの隣に置く、もう一つの手段」ーー安全運転を続けながら、必要な時だけ追い越し車線で一気に加速する。そんな賢く、そして貪欲な「両利き」の戦略が必要である。
ただし、最終的に投資は、誰のせいにもできない自己責任の世界だ。業者に言われるがまま行動し、思考を停止した者に待っているのは、容赦のない搾取だけである。かくいう私もかつてその陥穽(かんせい)にハマって4年間を棒に振った。
だからこそ、私はあえて厳しい言葉を言おう。「自己流は『事故』流である」。
小原 正徳
株式会社不動産科学研究所 代表取締役
投資家・事業家/不動産鑑定士/宅地建物取引士
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