迫る日銀の6月会合…「追加利上げ」の行方は? 長期化する中東有事を見据えた「夏のドル資産防衛」4つの具体策

迫る日銀の6月会合…「追加利上げ」の行方は? 長期化する中東有事を見据えた「夏のドル資産防衛」4つの具体策
(※写真はイメージです/PIXTA)

中東情勢の緊迫化によるインフレ圧力や円安の長期化を背景に、金融市場は日銀の6月金融政策決定会合に注目しています。日銀の今後の金融政策の行方を読み解くとともに、個人投資家が夏に備えて実践したい「ドル資産防衛術」4つの視点について具体的に解説します。

高まるインフレ圧力…市場が注目する「日銀の金融政策決定会合」

2026年も折り返しが近づいていますが、世界経済を取り巻く不透明感はなお強いままです。2月末に始まった米国・イスラエルによるイランへの軍事行動は、その後いったん停戦合意が成立したものの、完全な収束には至っていません。ホルムズ海峡周辺では依然として緊張が続き、原油や天然ガスの供給不安が意識されています。

 

こうした状況は世界的なインフレ圧力を高める要因となっており、日本経済にも無視できない影響を与えています。その中で市場の注目を集めているのが、6月15日・16日に予定される日本銀行の金融政策決定会合です。

 

筆者は今回、日銀が追加利上げに踏み切る可能性はかなり高いと考えています。

日銀6月会合で現実味を帯びる「追加利上げ」

背景の一つが、米国の強い関心です。ベッセント財務長官は5月中旬に来日し、高市首相や片山財務相らと会談しました。当初は植田日銀総裁との東京での面会も報じられていましたが、植田総裁の海外出張により実現しませんでした。その後、両者はパリで直接会談しました。

 

ベッセント長官は一連の会談後、「植田総裁を信頼している」「日本経済の基礎条件は強い」と述べるとともに、日銀の独立性に言及しました。表向きは信頼表明ですが、市場では「米国が日銀に対して追加利上げを求めている」と受け止められています。

 

実際、ロイター調査ではエコノミストの約3分の2が6月利上げを予想しており、市場でも7~8割程度の確率で織り込まれています。日銀内部でも前回会合では複数の審議委員が利上げを主張しており、政策スタンスは以前より明らかに引き締め方向へ傾いています。
一方で、植田総裁自身は慎重な姿勢を崩していません。中東情勢の先行きやエネルギー価格の変動が日本経済に与える影響を見極めたいという考えもあるのでしょう。

 

しかし、ここには興味深い構図があります。もし市場の大勢が利上げを予想している中で日銀が据え置きを決定した場合、「政治的配慮を優先したのではないか」との見方が強まる可能性があります。植田総裁にとっては、中央銀行としての独立性を示す意味でも、自律的な判断として利上げを実施する方が説明しやすい局面になっているとも言えます。

利上げ観測を支える「物価」と「円安」の現実

では、なぜ今になって利上げが現実味を帯びているのでしょうか。

 

最大の理由は物価です。輸入物価の高止まりに加え、賃上げの広がりを背景に企業の価格転嫁も進んでいます。エネルギー価格の上昇も重なり、基調的なインフレ圧力は依然として強い状態です。また、為替市場ではドル円が依然として歴史的な円安圏で推移しています。日米金利差はなお大きく、円安による輸入インフレも続いています。日銀としても、「正常化」を進める意思を市場に示す必要性が高まっています。

 

もっとも、仮に6月に0.25%の追加利上げが実施されたとしても、日米金利差が一気に解消されるわけではありません。日本の政策金利が1%になったとしても、依然として大きな米国との金利差があります。

夏に備えたい「ドル資産防衛術」4つの視点

その前提で、個人投資家が考えておきたいのが「夏のドル資産防衛術」です。

 

その1:ドル建て資産の分散保有

 

米国債やS&P500連動ETFなどは依然として有力な投資対象です。ただし、今後は円高方向への修正リスクも意識しなければなりません。為替ヘッジの有無は、自身のリスク許容度に応じて慎重に選択することが重要です。

 

その2:コモディティへの一定の配分

 

中東で続く地政学リスクが長期化すれば、原油や天然ガス価格の高止まりも十分考えられます。金や白金などの貴金属もインフレヘッジとして機能する可能性があります。ポートフォリオ全体の5~10%程度を目安に組み入れる選択肢もあるでしょう。

 

その3:日本株の選別投資

 

円安メリットを享受しやすい輸出企業に加え、防衛関連やエネルギー関連、さらに政府が成長戦略として重視する半導体・AI関連分野にも引き続き注目が集まると考えられます。

 

その4:現金や預金の価値を見直す

 

金利のある世界では、預金にも一定の利回りが付き始めます。リスク資産へ全力投資するのではなく、流動性を確保しておくことは、市場急変時の大きな武器になります。

日銀の決断が左右する後半戦の投資環境

今回の日銀会合は、単なる「利上げか据え置きか」という話ではありません。米国からの視線、中東情勢によるインフレ圧力、そして日銀の独立性という複数の要素が複雑に絡み合っています。

 

現時点では、私は6月利上げの可能性が高いとみています。仮に見送れば、円安再加速への警戒感が高まり、市場との対話も難しくなるからです。

 

長い目で見れば、日本は確実に「金利のある世界」へ戻ろうとしています。その変化を恐れるのではなく、資産防衛と成長機会の両立を図る好機として捉えることが、これからの投資家に求められる視点ではないでしょうか。

 

 

藤田 行生
SBI FXトレード株式会社
代表取締役社長

 

※ 本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

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