共同経営者との泥沼トラブル、SNS上の行き過ぎた自己顕示欲…司法書士が見た「会社設立後に破綻する人」の共通点

共同経営者との泥沼トラブル、SNS上の行き過ぎた自己顕示欲…司法書士が見た「会社設立後に破綻する人」の共通点
(※写真はイメージです/PIXTA)

会社設立のハードルが下がった今、会社経営を目指す人が増えています。一方で、仲間割れで身動きが取れなくなる、情報発信に熱中して経営の足元がおろそかになるといったケースも散見されます。会社経営を成功させるには、どのような点に留意すべきなのでしょうか。永田町司法書士事務所の代表司法書士、加陽麻里布氏に話を聞きました。

「会社を作ること」がゴールになっていないか

近年では会社設立の手続き自体は驚くほどシンプルで、コストもそれほどかかりません。いわば「誰でも社長になれる時代」です。しかし、司法書士として数多くの設立現場に立ち会っていると、「設立した瞬間」がピークとなり、数年と経たずに破綻していく会社や、泥沼のトラブルに巻き込まれる経営者を数多く目にします。

 

会社は「作る」ことよりも、「維持し、続けていく」ことの方がはるかに大変です。そこには生々しい人間関係のリアルや、法律の厳しさも存在します。

 

「会社は「作る」ことよりも、「維持し、続けていく」ことの方が遥かに難しい」と、司法書士の加陽氏は語る。
「会社は〈作る〉ことより〈維持し、続けていく〉ことの方がはるかに大変です」司法書士・加陽麻里布氏

 

これから自分の可能性を広げようとする人が、最初の一歩で致命的な大けがを負わないためには、「失敗する会社」の共通点と、身の丈に合った健全な経営のあり方を知っていただきたいと思います。

圧倒的ワースト1位…友達同士による「50%ずつの起業」

会社設立に伴うトラブルの中で、圧倒的に多いのが「仲の良い友人同士、あるいはビジネスパートナーと共同で会社を作る」というケースです。

 

設立当初、2人の仲が良いときは誰もが「自分たちは絶対に大丈夫。お互いを信頼しているから」と笑顔で話します。そして、出資額を半分の50万円ずつ、株式の比率も「50%・50%」という、一見すると非常に平等でクリーンな形でスタートを切ってしまいます。

 

実は、これが後々の悲劇を生む最大の引き金になります。

 

日本の会社法では、役員の報酬をいくらにするか、経費をどう使うか、どのような事業方針を進めるかといった会社の意思決定ルールが細かく決まっており、基本的には「過半数(50%超)」や「3分の2以上」の賛成が必要です。

 

しかし、株を50%ずつ分け合っていると、2人の意見が割れた瞬間に、会社としての意思決定が完全にストップしてしまいます。どれだけ話し合っても、一歩も前に進めなくなるのです。この段階になってから司法書士のもとに「どうにかしてほしい」と相談に来られても、法律の力だけで解決することは難しく、当事者間で泥沼の話し合いを続けてもらうしかありません。

 

共同で創業する場合であっても、必ずどちらか一方が「3分の2以上」の議決権(株式)を持つなど、いざという時に最終決定を下せる構造にしておくこと。「株とは何か」「議決権とはどういうリスクを持つのか」という最低限の知識を持たずに感情だけでスタートすることは、極めて危険です。

SNSで目にする「社長ブランディング」の罠

もう一つ、最近の傾向として増えている失敗パターンが、SNSにおける「見栄」や「ブランディング」に惑わされるケースです。

 

昨今は、毎日のようにSNS上で「資金調達〇億円達成!」といった華やかなニュースが流れてきます。もちろん、それだけの期待を集めるビジネスモデル自体は素晴らしいのですが、ここで本質を見誤ってはいけません。

 

資金調達とは、裏を返せば「自分の会社の株を他人に渡し、将来の責任を背負ってお金を借りている(出資してもらっている)」状態に過ぎないからです。大事なのはお金を集めたことではなく、その資金を使ってどう地道に事業を作っていくかです。

 

しかし、こうした発信に影響され、高級店での会食やブランド品をSNSに投稿するような「社長ブランディング」に傾倒していく経営者は、10年後、20年後といった長期的なスパンで見たときに、会社を生き残らせることが非常に難しくなります。見栄や無理な拡大は、会社の資金繰りを急速に悪化させ、本質的な経営の目を曇らせてしまうからです。

生き残る会社の共通点…「無理のない姿勢を徹底する」こと

では逆に、何十年にもわたって健全に運営され、長く続いている会社にはどのような特徴があるのでしょうか。その答えは、一言で言えば「無理のない姿勢を徹底している会社」です。

 

ビジネスの本質は、派手な大博打ではなく、日々の地道な積み重ねの連続です。長く続く会社の経営者は、世間の流行やSNSの華やかな情報に惑わされず、自社の身の丈に合った規模感を正確に把握しています。無駄な固定費をかけず、見栄を張らず、手元の資金管理を何よりも重視しながら、一歩ずつ確実に進んでいきます。

 

これから副業や生活の延長線上で会社を作ろうと考えている人にとって、目指すべきはまさにこの「無理をしない、身の丈に合った会社」です。誰かに自慢するための会社ではなく、自分の人生を豊かにし、大切な資産を守るためのツールとして会社を捉えることが、最も確実で安全な経営のスタンスです。

知識を持って、一歩を踏み出す

会社を作ることは、決してゴールではありません。それは、自分の人生の選択肢を広げるための「新しい旅の始まり」に過ぎません。

 

自分の人生の選択肢を広げるため、新しい可能性を切り拓くための起業を勧める加陽氏
「自分の人生の選択肢を広げるため、新しい可能性を切り拓くための起業を」

 

だからこそ、設立前の段階から「株の仕組み」や「友達と組むことのリスク」、「資本金の本当の意味」といった最低限のリアルな知識を、いわば〈防具〉として身につけておくことが大切です。

 

事前の少しの知識が、将来あなたの大切な財産や人間関係を守る最強の盾になります。リスクを正しくコントロールし、賢くツールとして会社を使いこなすことで、ぜひあなただけの新しい可能性を切り拓いていってください。

 

 

加陽 麻里布

司法書士法人永田町事務所 代表司法書士

 

 

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