(※写真はイメージです/PIXTA)

老後資金にまとまった備えがあれば、退職後は穏やかに暮らせる――そう考える人は少なくありません。退職金や貯蓄があり、住宅ローンも終わっていれば、日々の生活に大きな不安はないようにも見えます。しかし、収入が年金中心になると、通帳残高が少しずつ減っていくこと自体が大きなストレスになることがあります。

「自分で稼げる場所がある」…取り戻した小さな自信

智子さんが仕事を探し始めたのは、生活費を大きく補うためだけではありませんでした。

 

もちろん月に数万円でも収入があれば、家計の安心感は違います。しかしそれ以上に大きかったのは、「自分にもできることがある」と感じたかったからでした。

 

「夫の退職後、家の中の空気が少し重くなっていたんです。毎日二人でいるのに、将来のお金の話ばかりになってしまって」

 

最初は不安でした。60代で応募できる仕事があるのか。長いブランクがあっても受け入れてもらえるのか。体力は続くのか。それでも智子さんは、近所のスーパーや公共施設の受付、短時間の清掃などの求人を探し始めました。

 

内閣府『令和7年版高齢社会白書』によると、令和6年の労働力人口比率は65〜69歳で54.9%、70〜74歳で35.6%と、高齢期にも働く人は珍しくありません。

 

智子さんが選んだのは、週3日の公共施設の受付業務でした。勤務時間は午前中が中心で、体への負担も大きくありません。収入は月に5万円ほど。家計全体から見れば大きな金額ではありません。それでも、夫婦の空気は少しずつ変わっていきました。

 

以前のように、通帳残高だけを見てため息をつく時間は減りました。智子さん自身も、家に帰ると自然に話題が増えたといいます。

 

「今日はこんな人が来た」

「職場の人に花をもらった」

 

そうした小さな出来事が、生活に張りを戻していきました。

 

「働くことが、こんなに気持ちを変えるとは思いませんでした」

 

63歳で踏み出した一歩は、家計を劇的に変えるものではありませんでした。それでも、夫婦にとっては十分な意味がありました。

 

通帳の数字を守るだけではなく、自分たちの暮らしを前向きに整え直すこと。智子さんが選んだ仕事は、穏やかな老後を取り戻すための、小さくも確かな足がかりだったのです。

 

 

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