(※写真はイメージです/PIXTA)

定年後、都市部を離れて地方の一戸建てでゆっくり暮らしたいと考える人は少なくありません。広い庭、静かな環境、住宅費の安さ。理想的に見える一方で、年齢を重ねるにつれ、家の維持管理や買い物、通院、近所付き合いが負担になることもあります。離れて暮らす子どもがその変化に気づくのは、思ったより遅い場合があります。

「この家で暮らし続けたいなら…」暮らしの立て直し

亮介さんが話を聞くと、両親の生活は想像以上に変化していました。

 

父は庭仕事中に腰を痛めて以来、重いものを運ぶことが難しくなっていました。母も膝の痛みで掃除機をかけるのが負担になり、2階の部屋にはほとんど上がらなくなっていたといいます。

 

「最初は少し休めば戻ると思っていた」

「息子に心配をかけるほどじゃないと思った」

 

両親はそう言いました。

 

しかし実際には、片づけられないものが少しずつ増え、食品管理や掃除も行き届かなくなっていました。認知症とまではいえないものの、体力の低下と孤立が生活全体に影響していたのです。

 

内閣府『令和7年版高齢社会白書』でも、高齢者のみの世帯や高齢単身世帯の増加が示されており、家族と離れて暮らす高齢者の見守りや生活支援は重要な課題となっています。特に地方では、移動手段や医療・買い物へのアクセスが生活の継続に大きく関わります。

 

亮介さんは、最初こそ強い口調で言いかけました。

 

「なんでここまで放っておいたんだよ」

 

しかし、父の表情を見て言葉を飲み込みました。

 

父も母も、怠けていたわけではありません。できていたことが少しずつできなくなり、その変化を認められないまま時間が過ぎていたのです。

 

「助けてほしいと言うのが、恥ずかしかったんだと思います」

 

亮介さんは数日かけて実家を整理し、地域包括支援センターにも相談しました。買い物支援、見守りサービス、家事代行、通院時の移動手段。使える支援を一つずつ確認していきます。さらに、両親と今後の住まいについても話し合いました。

 

「この家で暮らし続けたいなら、仕組みを作らないと難しい」

 

父は最初、黙っていました。けれど最後には、小さくうなずきました。

 

「自分たちだけで何とかなると思っていたけど、もう無理をする年じゃないのかもしれない」

 

現在、夫婦は1階だけで生活できるよう家具を整理し、庭の管理も業者に依頼するようになりました。亮介さんも、月に一度は帰省し、週に数回はビデオ通話で様子を確認しています。

 

地方の一戸建ては、元気なうちは魅力的な住まいです。しかし、年齢とともに、その広さや立地が負担に変わることもあります。

 

 

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