(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢になると、一人暮らしへの不安は少しずつ大きくなっていきます。転倒や病気、買い物や通院の負担。特に配偶者を亡くした後は、「誰かと一緒に暮らしたい」と感じる人も少なくありません。そんな中、離れて暮らす子どもから「一緒に住もう」と言われれば、安心を感じるのは自然なことです。しかし、その同居が、必ずしも穏やかな老後につながるとは限りません。

「食費も光熱費も全部…」息子の一言に凍りついた母

同居から半年ほどが過ぎたころ、勝さんは金銭面で苛立ちを見せるようになりました。

 

「電気代、また上がってる」

「食費だって結構かかるんだぞ」

 

最初は軽い愚痴のように聞こえていた言葉も、次第に責める口調へ変わっていきます。千恵子さんは、自分が負担になっているのではないかと感じ始めました。

 

「なるべく食べないようにしよう、とか、電気をつけないようにしようとか、そんなことばかり考えるようになりました」

 

ある日の夕食時、勝さんは不機嫌そうにこう言いました。

 

「正直、この年金額じゃ厳しいんだよ」

 

千恵子さんは、箸を持つ手が止まったといいます。さらに勝さんは続けました。

 

「こっちだって余裕ないんだから。もう少し何とかならないの?」

 

千恵子さんには、“何とか”の意味が分かりませんでした。貯金はほとんど残っていません。生活保護を受けるほどではないと思い、これまで相談もしてきませんでした。

 

「一緒に住もうって言ってくれたのに…」

 

その夜、千恵子さんは布団の中で静かに泣いたといいます。

 

厚生労働省『国民生活基礎調査』では、高齢者世帯の多くが公的年金を主な収入源として生活していることが示されています。家族との同居によって生活が安定するケースもあれば、逆に経済的依存や関係悪化が深刻化することもあります。

 

さらに、子ども世代側にも生活不安がある場合、同居は“支え合い”ではなく、“共倒れ”に近い状態になることがあります。千恵子さんの場合も、勝さん自身が不安定な生活の中で余裕を失っていたのです。

 

その後、地域包括支援センターの職員が介入し、家計状況や生活支援について相談が行われました。千恵子さんは、高齢者向け住宅や生活保護制度について初めて説明を受けたといいます。

 

生活保護は、「家族がいるから受けられない」という単純な制度ではありません。扶養照会は行われますが、実際には家族に十分な援助能力がない場合、利用につながるケースもあります。

 

「もっと早く相談していればよかったのかもしれません」

 

現在、千恵子さんは高齢者向け住宅への転居を検討しています。

 

「息子を嫌いになったわけじゃないんです。ただ、お互い苦しかったんだと思います」

 

親子で暮らすことは、本来、安心につながるはずの選択です。しかし、経済的不安を抱えたまま始まった同居は、親子関係そのものを追い詰めてしまうことがあります。

 

「一緒に住もう」

 

あの日、千恵子さんにとって救いの言葉だったその一言は、数ヵ月後には、老後の不安をさらに深くするものへ変わってしまっていました。

 

 

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