(※写真はイメージです/PIXTA)

孫の存在は、高齢の親世代にとって大きな喜びです。成長を近くで見守れることは、老後の楽しみの一つでもあります。しかし、来訪の頻度が増え、食費や光熱費、送迎、預かりといった負担が日常化すると、家計や体力に影響が出ることもあります。かわいいからこそ断りにくい――その葛藤が、老後生活を静かに揺らすケースがあります。

「家族だから」で飲み込んできた負担…夫婦が決めた線引き

体力面の負担も、次第に無視できなくなりました。

 

孫はまだ小学生で、元気いっぱいです。家の中を走り回り、宿題を見てほしいと言い、ゲームの相手も求めます。久美子さんは夕方になるとぐったりすることが増えました。

 

「かわいいのに、来る日が少し怖くなってきたんです」

 

その感情に、久美子さん自身が戸惑いました。

 

「孫に会いたくないわけじゃないんです。でも、毎回食事を用意して、片づけて、宿題を見て……となると、体がついていかなくて」

 

ある日、孫が帰った後の居間を片づけながら、久美子さんはぽつりと漏らしました。

 

「こんな老後を望んだわけじゃなかったね」

 

正夫さんも、同じことを感じていました。

 

「二人で静かに暮らすつもりだったのに、いつの間にか、また子育てをしているみたいになっていたんです」

 

もちろん、長女を責めたいわけではありません。育児と仕事の両立が大変なことは、夫婦にも分かっています。けれど、祖父母の支援が“当然”になってしまうと、関係は少しずつ苦しくなります。

 

夫婦は、長女と話し合うことにしました。

 

「孫はかわいいし、来てくれるのはうれしい。でも、毎日のように預かるのは少ししんどい」

 

長女は最初、驚いた表情を見せました。

 

「そんなに負担になっていたの?」

 

久美子さんはうなずきました。

 

「言いにくかったの。嫌いになったわけじゃないから」

 

話し合いの結果、孫を預かる日は週2日までにし、夕食が必要な日は事前に相談することになりました。長期休みは、学童や地域の子ども向けサービスも利用するようにしました。

 

最初は少しぎこちなさもありましたが、夫婦の生活には少しずつ余裕が戻ってきました。

 

「来る日が決まっていると、こちらも準備できます。楽しみに待てるようになりました」

 

孫との関係も、以前より落ち着いたものになっています。

 

「ばあば、また来週来るね」

 

その言葉を聞いた久美子さんは、心から笑えるようになったといいます。

 

家族を支えることは大切です。しかし、支える側の暮らしが壊れてしまっては、長く続けることはできません。孫をかわいがることと、無理をして預かり続けることは同じではありません。

 

夫婦が選んだ線引きは、家族を遠ざけるためではなく、これからも穏やかに関わり続けるための選択だったのです。

 

 

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