「家族だから」で飲み込んできた負担…夫婦が決めた線引き
体力面の負担も、次第に無視できなくなりました。
孫はまだ小学生で、元気いっぱいです。家の中を走り回り、宿題を見てほしいと言い、ゲームの相手も求めます。久美子さんは夕方になるとぐったりすることが増えました。
「かわいいのに、来る日が少し怖くなってきたんです」
その感情に、久美子さん自身が戸惑いました。
「孫に会いたくないわけじゃないんです。でも、毎回食事を用意して、片づけて、宿題を見て……となると、体がついていかなくて」
ある日、孫が帰った後の居間を片づけながら、久美子さんはぽつりと漏らしました。
「こんな老後を望んだわけじゃなかったね」
正夫さんも、同じことを感じていました。
「二人で静かに暮らすつもりだったのに、いつの間にか、また子育てをしているみたいになっていたんです」
もちろん、長女を責めたいわけではありません。育児と仕事の両立が大変なことは、夫婦にも分かっています。けれど、祖父母の支援が“当然”になってしまうと、関係は少しずつ苦しくなります。
夫婦は、長女と話し合うことにしました。
「孫はかわいいし、来てくれるのはうれしい。でも、毎日のように預かるのは少ししんどい」
長女は最初、驚いた表情を見せました。
「そんなに負担になっていたの?」
久美子さんはうなずきました。
「言いにくかったの。嫌いになったわけじゃないから」
話し合いの結果、孫を預かる日は週2日までにし、夕食が必要な日は事前に相談することになりました。長期休みは、学童や地域の子ども向けサービスも利用するようにしました。
最初は少しぎこちなさもありましたが、夫婦の生活には少しずつ余裕が戻ってきました。
「来る日が決まっていると、こちらも準備できます。楽しみに待てるようになりました」
孫との関係も、以前より落ち着いたものになっています。
「ばあば、また来週来るね」
その言葉を聞いた久美子さんは、心から笑えるようになったといいます。
家族を支えることは大切です。しかし、支える側の暮らしが壊れてしまっては、長く続けることはできません。孫をかわいがることと、無理をして預かり続けることは同じではありません。
夫婦が選んだ線引きは、家族を遠ざけるためではなく、これからも穏やかに関わり続けるための選択だったのです。
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