「一人になっても支出は減らない」…見えてきた家計の厳しさ
さらに美枝子さんを不安にさせたのは、「夫が亡くなっても、生活費は半分にはならない」という現実でした。食費は多少減ったものの、固定資産税、火災保険、通信費、家の修繕費などは、一人暮らしになっても大きく変わりません。
「“夫婦二人分の生活費”という感覚だったんですが、実際には家を維持する費用がかなりかかるんですよね」
総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の単身無職世帯の平均消費支出は月14万9,286円。一方、可処分所得は月12万4,275円で、平均では毎月赤字となっています。高齢単身世帯では、貯蓄の取り崩しを前提に生活しているケースも少なくありません。
美枝子さんも、夫の死後に初めて家計簿を細かくつけ始めました。
「今までは夫婦二人で何となく回っていた。でも、一人になると、“あと何年この貯蓄で暮らせるか”を考えるようになりました」
特に不安だったのは、今後の医療費と介護費です。長寿化によって「想定より長く老後資金が必要になる」可能性が指摘されています。
「夫がいたころは、“何とかなる”と思っていました。でも、一人になると、急に現実が迫ってくる感じでした」
現在、美枝子さんは固定費を見直し、不要な保険の整理や通信費の削減を進めています。また、地域のシニア向け相談会にも参加し、制度について学び直しているといいます。
「もっと早く知っておけば、夫婦で準備の仕方も変わっていたかもしれません」
遺族年金は、残された家族を支える重要な制度です。しかし、“何となくの理解”だけで将来を想像していると、実際の金額とのギャップに戸惑うことがあります。
「夫を亡くした悲しみだけでもつらいのに、お金の不安まで重なるとは思いませんでした」
そう語る美枝子さんの表情には、戸惑いと現実を受け止め始めた静かな強さがにじんでいました。
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