「取り戻したい」…老後資金を失って気づいた“孤独の危うさ”
投資額は、次第に大きくなっていきました。
「今ならチャンスです」
「ここで増やせば、老後がもっと安心になりますよ」
女性からそう言われるたび、小林さんは追加で送金していきます。退職金の一部、定期預金、さらには生活費として残していた資金にも手をつけました。
「どこかで、“この人は自分を騙さない”と思い込んでいたんです」
しかし、ある日を境に連絡が途絶えます。投資アプリにもアクセスできなくなり、初めて異変に気づきました。
「頭が真っ白になりました。“まさか自分が”という感じでした」
失った金額は、数百万円規模にのぼっていました。
消費者庁や警察庁も、高齢者を狙ったSNS型投資詐欺について注意喚起を行っています。特に「少額で利益を出して信用させ、その後に高額送金を促す」という手口は典型例とされています。
「ニュースでは見ていたんです。でも、自分は大丈夫だと思っていました」
小林さんが最もつらかったのは、お金だけではありませんでした。
「娘に言えなかったんです。“そんなものに騙されたの?”と思われるのが怖くて」
しかし、最終的には娘に打ち明けました。すると娘は、責めるより先にこう言ったといいます。
「お父さん、一人で抱え込まないで」
その言葉に、小林さんは涙が止まらなかったといいます。
内閣府『令和7年版 高齢社会白書』でも、高齢者の単身世帯は増加傾向にあり、孤立や社会的つながりの希薄化が課題として挙げられています。孤独は、時に判断力や警戒心を弱める要因にもなります。
現在、小林さんは地域の交流会やシニア向けサークルに参加し、少しずつ生活を立て直しています。
「人と普通に話せる場所があるだけで、かなり違いますね」
失ったお金は戻りません。それでも、小林さんはこう語ります。
「結局、欲しかったのは“儲け”じゃなかったんだと思います。誰かとつながっていたかっただけなんです」
老後のリスクは、通帳の残高だけでは測れません。孤独や不安にどう向き合うか――それもまた、老後生活を左右する大きな要素なのかもしれません。
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