1,500万円の貯金が10年で消滅…年金額も大幅減
母が亡くなった直後、父の手元には1,500万円ほどの貯金があったといいます。正雄さんは「これだけあれば、なんとかなる」と考えていましたが、現実は計算通りにはいきませんでした。
母の葬儀、通院費、家電の買い替え、時折の外食。さらに家の修繕費に物価高……。想像以上の速さで貯金は減っていきました。
正雄さんの現役時代の年収は決して低くありませんでした。しかし、そこには、共働き夫婦が直面しやすい「老後家計の落とし穴」がありました。
父と母は、母がパート勤めをしながら支え合う家庭でした。母が生きていた頃は、二人の年金を合わせて月額約23万円。住宅ローンも終わっており、慎ましく暮らすには十分な額でした。
しかし、母の死後、収入は激減します。
妻が亡くなった場合、夫が受け取れる遺族年金は、年齢や加入歴、自身の老齢厚生年金額などによって大きく異なります。夫自身に一定額の厚生年金がある場合、追加支給がほとんどない、あるいは受け取れないケースもあります。
結局、二人で月23万円あった世帯収入は、母の年金が丸ごと消え、父自身の年金月15万円だけになりました。月8万円のダウン。年間にして約100万円の減収です。これが10年続き、貯金を食いつぶす決定打となりました。
月15万円なら暮らせるのでは? 一見そう思えるかもしれません。しかし、築古の一戸建てには、固定資産税、火災保険料、そして容赦なく上がり続ける光熱費といった「家を持ち続けるコスト」が重くのしかかります。
総務省「家計調査(2024年平均)」によると、高齢単身無職世帯の支出は約15万7,000円。この金額は生活必需品、医療費、住居費を含む標準的な生活水準を示しており、月15万円では突発的な出費に対応するのが厳しい現実がわかります。貯金が底をついたことで、父の生活は一気に「詰み」を迎えたのです。
「SOSを出せなかった」困窮を隠した父のプライド
結局、父は住み慣れた家を売却することを決意しました。もう、思い出を金に換える生活は限界だったからです。
父がなかなかSOSを出せなかったのは、息子に心配をかけたくないという親心と、男としてのプライドでした。「大丈夫」という言葉を信じすぎないこと。それが、親の異変に気付くためには必要です。
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