「きょうだいで揉めるなんて」…相続で崩れた家族の関係
会社員の高橋さん(仮名・56歳)は、父の死後、思いもよらぬ状況に直面しました。父が残したのは、評価額1,600万円の実家と、預金約3,200万円。相続人は、長女の姉、次女の妹、そして高橋さんの3人です。
「金額的には、揉めるような規模じゃないと思っていました。きょうだい仲も悪くなかったですし」
ところが、遺産分割の話し合いはすぐに行き詰まります。発端は姉の一言でした。
「私が家に住みたいと思ってるの」
姉は現在、賃貸暮らし。将来的な住まいとして実家を希望しました。一方で、長年父の介護を担ってきた妹は、強く反発します。
「私はずっとここに通って介護してきたのに、何も考えてないの?」
妹は結婚して近隣に住んでおり、数年前から父の通院や日常生活の世話を一手に引き受けてきました。仕事との両立は厳しく、精神的にも大きな負担だったといいます。
高橋さんは、両者の主張の間で板挟みになりました。
「どっちの言い分も分かるんです。姉は生活の安定を考えているし、妹はこれまでの苦労がある。でも、どう折り合いをつければいいのか分からなくて…」
民法では、原則として相続財産は法定相続分に従って分割されます。今回の場合、3人で均等に分けるのが基本です。しかし、実家のような不動産は単純に分けることができません。
さらに、妹は「寄与分」を主張しました。
「私が介護してきた分は、ちゃんと考慮されるべきだと思う」
寄与分とは、被相続人の財産維持や増加に特別な貢献をした相続人に対し、その分を考慮して相続割合を調整する制度です。ただし、認められるには「通常の扶養義務を超える貢献」が必要とされ、判断は容易ではありません。
一方、姉はこう反論します。
「気持ちは分かるけど、それと相続は別の話でしょ」
話し合いは平行線をたどりました。
