「これで少しは落ち着くはず」特養入所で見えた安堵
真理子さん(仮名・53歳)は、義母・久子さん(仮名・77歳)の介護を約3年間担ってきました。
久子さんは認知症の進行により、要介護3の認定を受けていました。日常生活の多くに見守りや介助が必要な状態で、真理子さんは仕事と介護を両立する日々を続けていました。
「夜中に何度も起きることもありました。正直、限界に近かったと思います」
夫は仕事が忙しく、介護の多くは真理子さんが担っていました。訪問介護サービスも利用していましたが、それだけでは対応しきれない場面も多かったといいます。
そうした中で、特養への入所が決まりました。
「ようやく少し休めると思いました」
久子さんの年金は月14万円ほど。特養は所得に応じて利用料が調整されるため、民間施設に比べて費用負担は抑えられていました。
厚生労働省の制度によれば、特養の利用料は本人の所得や資産に応じて段階的に設定されており、低所得者には負担軽減措置も設けられています。
入所当日、久子さんはやや不安そうな様子を見せていたものの、大きな混乱はありませんでした。
「これでお互いに少し楽になるね」
そう声をかけながら、真理子さんは施設を後にしました。
入所後の生活は安定しているように見えました。定期的に面会に訪れると、職員が丁寧に対応しており、食事や入浴も問題なく行われている様子でした。
「これなら安心できると思っていました」
しかし、その認識は半年後に大きく揺らぐことになります。ある日、施設から一本の電話が入りました。
「今後の生活について、ご相談したいことがあります」
面談で伝えられたのは、久子さんの状態の変化でした。認知症の進行により、他の入所者とのトラブルが増えていたこと、夜間の行動が活発になり、対応が難しくなっていることなどが説明されました。
そして、施設側からこう告げられます。
「現在の環境では、これ以上の対応が難しくなっています。退所も含めてご検討いただければと思います」
真理子さんは、その場で言葉を失いました。
「特養に入ったら、ずっといられるものだと思っていました」
特養は「終の住処」として認識されることも多い施設です。しかし実際には、医療的なケアの必要性や行動の変化によって、施設側の対応範囲を超える場合、退所を求められるケースも存在します。
「こんなことってあるんだと思いました」
突然、再び介護の選択を迫られることになったのです。
