(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢の親と離れて暮らしていると、日常の変化に気づく機会は限られます。電話やメッセージでは「大丈夫」と返ってきても、実際の生活状況までは分かりにくいものです。体調や住環境の変化は、本人の中で徐々に進行するため、周囲が異変を把握したときには状況が大きく悪化しているケースもあります。

「もっと早く気づけたのではないか」息子が抱え続ける思い

葬儀を終えたあと、正弘さんはしばらく実家に残り、母の生活の痕跡を整理しました。

 

引き出しの中には、古い通帳と一緒に、几帳面に書かれた家計簿が残されていました。そこには、電気代や食費を細かく抑えようとする記録が続いていました。

 

「無理をしていたんだと思います。でも、それを誰にも言わなかった」

 

正弘さんは、自分が母の変化に気づけなかったことを悔やんでいます。

 

「忙しいことを理由にしていた部分はあります。でも、あのメッセージをもう少し真剣に受け止めていれば、違ったかもしれない」

 

大きく何かが変わるきっかけがあったわけではありません。日々の小さな変化が積み重なり、その結果として、取り返しのつかない出来事につながってしまいました。

 

それでも正弘さんは、「あのときのことを無駄にしたくない」と話します。現在は、親世代の知人や近所の高齢者にも気を配るようになり、地域の見守り活動にも関わり始めました。

 

「一人で抱え込んでいる人は、思っている以上に多いのかもしれません」

 

離れて暮らす家族の状況は、見えにくいまま変化していきます。だからこそ、「大丈夫」という言葉の裏側にある生活にも目を向ける必要があります。

 

「元気だと思っていても、それが本当にそうかは分からない」

 

「もう少しだけでも、気にかけていればよかった」

 

その思いは、今も消えることはありません。

 

 

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