「もっと早く気づけたのではないか」息子が抱え続ける思い
葬儀を終えたあと、正弘さんはしばらく実家に残り、母の生活の痕跡を整理しました。
引き出しの中には、古い通帳と一緒に、几帳面に書かれた家計簿が残されていました。そこには、電気代や食費を細かく抑えようとする記録が続いていました。
「無理をしていたんだと思います。でも、それを誰にも言わなかった」
正弘さんは、自分が母の変化に気づけなかったことを悔やんでいます。
「忙しいことを理由にしていた部分はあります。でも、あのメッセージをもう少し真剣に受け止めていれば、違ったかもしれない」
大きく何かが変わるきっかけがあったわけではありません。日々の小さな変化が積み重なり、その結果として、取り返しのつかない出来事につながってしまいました。
それでも正弘さんは、「あのときのことを無駄にしたくない」と話します。現在は、親世代の知人や近所の高齢者にも気を配るようになり、地域の見守り活動にも関わり始めました。
「一人で抱え込んでいる人は、思っている以上に多いのかもしれません」
離れて暮らす家族の状況は、見えにくいまま変化していきます。だからこそ、「大丈夫」という言葉の裏側にある生活にも目を向ける必要があります。
「元気だと思っていても、それが本当にそうかは分からない」
「もう少しだけでも、気にかけていればよかった」
その思いは、今も消えることはありません。
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