(※写真はイメージです/PIXTA)

配偶者の死をきっかけに、まとまった資産を一度に受け取るケースは少なくありません。相続は生活の支えになる一方で、資産の管理や運用を自分で担う必要が生じます。特に金融知識に自信がない場合、短期間で複数の選択肢を提示され、判断に迷うこともあります。資産が増えた直後ほど、冷静な判断が難しくなる場面もあるものです。

「こんな大金をどうすれば…」突然の相続と不安

美子さん(仮名・69歳)は、長年会社員として働いてきた夫を亡くしたあと、遺産として約1億5,000万円を受け取りました。預貯金や有価証券を整理した結果、最終的にまとまった金額が銀行口座に入金されたといいます。

 

「通帳の数字を見ても、現実味がありませんでした。こんなお金、自分で管理したことがなかったので」

 

美子さんは専業主婦として家庭を支えてきました。家計管理はしていたものの、本格的な資産運用は夫に任せており、自分で投資判断をした経験はほとんどありませんでした。

 

「これからどうやって暮らしていくのか、という不安より、“このお金をどうすればいいのか分からない”という不安のほうが大きかったです」

 

葬儀や各種手続きが一段落したころから、状況は一変します。銀行や証券会社からの連絡が増え始めたのです。最初は、口座を開設している銀行からの連絡でした。

 

「このまま普通預金に置いておくのはもったいないですよ」「今のうちに運用を考えたほうがいいです」

 

担当者は丁寧な口調で説明し、パンフレットを持って自宅を訪問することを提案してきました。さらにその後、別の証券会社からも電話がかかってきます。

 

「相続された資産をお持ちの方にご案内しています」「分散投資でリスクを抑えながら運用できます」

 

どの会社も同じように「今のままでは損をする」「資産を増やすチャンス」といった説明を繰り返しました。

 

「最初は話を聞くだけのつもりでした。でも、どの人も“今が大事”と言うんです」

 

数日のうちに、複数の担当者と面談することになりました。投資信託、外貨建て商品、保険型の金融商品など、次々と提案されます。

 

「説明を聞くたびに、“なるほど”と思うんです。でも別の人の話を聞くと、また違うことを言われて、何が正しいのか分からなくなってしまって」

 

美子さんは、資料を何度も読み返しました。しかし専門用語が多く、完全に理解できているとは言えませんでした。それでも、「何か決めなければ」という焦りだけが強まっていきました。

 

「何もしないのが一番良くない、と言われると、そうなのかなと思ってしまって」

 

消費者庁『令和6年版 消費者白書』では、高齢者の金融トラブルの背景として、情報の非対称性や判断の難しさが挙げられています。特に短期間で複数の提案を受けると、比較や判断が難しくなる傾向があります。

 

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