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トランプ劇場と超富裕層課税 増税か、減税か――税制が映し出すアメリカの真実
奥村眞吾(著)+ゴールドオンライン(編集)
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一般家庭こそ「相続争い」の主戦場
――なぜ遺産分割は揉めるのか
遺産を巡る争いは富裕層に限ったものではない
2007年より超高齢社会に入っているわが国では、将来の相続に対する備えとして、さまざまな対策が行われています。
具体的には、賃貸アパート建設や資産組換えによる「相続税対策」、生命保険の活用や不動産売却による「納税資金対策」、生前贈与や遺言作成による「争族対策」がありますが、各対策のなかでも「争族対策」については、いまだ十分な効果が出ていないようです。
「争族」とは遺産分割を巡って相続人同士が争うことの造語であり、争族対策とは文字どおり「争わないための対策」です。現在公表されている令和4年度司法統計によると、家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割争いの件数は1万2982件にものぼります。これは20年前(平成13年度司法統計)の9004件の約1.4倍です。
一般的に、遺産を巡る相続での争いは一部の富裕層だけの話とイメージしがちです。しかし同統計によると、遺産分割で家庭裁判所に持ち込まれている紛争件数の内訳は、「遺産額5000万円以下」が全体の約76%を占めており、そのうちの約33%は「遺産額1000万円以下」となっています。
この結果から、「争族」とは一部の富裕層に限ったことでなく、一般庶民が少ない遺産を巡り奪い合っているのが実情といえます。
「ウチは揉めないだろう」が修羅場を招く
では、なぜ普通の家庭が揉めているのでしょうか。その要因は3つあります。第1に「遺産額全体に占める不動産(実家)の割合が高いこと」、第2に「不動産には分割しがたいという特性があること」、第3に「争わないための対策を講じていないこと」です。
つまり、遺産分割が難しい状況であっても、生前に十分な話し合いや検討がなされないまま、相続に突入してしまっている現実があります。その背景には、被相続人自身の考え方が影響しているようです。
2023年1月に日本財団より公表された、全国の60~79歳の男女2000人を対象とする『遺言・遺贈に関する意識・実態把握調査』によると、「遺言書を今後も作成しない理由」のトップ3は以下の内容です。
1位 遺言を書くほどの財産を持っていないから(43.3%)
2位 法定相続通りに分けてもらえればいいと思っているから(24.6%)
3位 家族や親族がうまく分配してくれると思うから(23.4%)
これらの理由から見えてくるのは、被相続人に「うちの家族は揉めない」という大前提があることです。信じるのはよいことですが、実際の相続では思いどおりにならないケースが少なくありません。
相続の前と後で決定的に異なるのは、一家の中心である被相続人自身がこの世にいないことです。被相続人の存命中は遠慮していた相続人も、被相続人がいなくなった途端に自分の考えを主張し始めたり、時にはその主張は相続人自身ではなく、その相続人の配偶者の意思であったりします。
民法で定める法定相続分は分割の指針でしかないため、遺言などがなければ、遺産分割は話し合いで決まることになります。仮に子ども3人が相続人で、かつそれぞれに配偶者がいる場合は、実質的には各配偶者を含めた6人で協議するような状況も起こります。子ども同士の仲がよくても、各配偶者の意見に影響を受け、雲行きが変わる可能性があります。
また、今は揉める要素がなくても、時間の経過によって相続人ら家族を取り巻く環境も変わります。
例えば、相続人の家庭で教育費がかさむようになった、税金や社会保険料の増加で給料の手取り額が減った、物価や住宅ローン金利が上昇したなどです。場合によっては相続人自身のリストラや、家族の誰かの病気ということもあります。そうなれば、以前は遺産をあてにする気がなかった相続人でも主張せざるをえないでしょう。
※ 本記事は書籍の内容を抜粋・掲載したものであり、最新の法令・制度とは異なる場合があり、また個別の事案に対する助言を行うものではありません。実務にあたっては必ず最新の情報をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。
平田 康人
行政書士平田総合法務事務所/不動産法務総研 代表
行政書士/宅地建物取引士/2級FP技能士
国土交通大臣認定 公認不動産コンサルティングマスター
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