一枚一枚状態が違う…金融市場から隔絶されたコインの“特殊性”
投資の難しさという点でもコインは不適格です。株の世界をみると、たとえばソニー株は東京証券取引所に上場していますし、NY市場にもADR(米国預託証券)を上場しています。投資家がどこで買おうがソニー株はソニーの株です。株価は刻々と動きますが、その株価が妥当と考えるならいつでも買うことができるのです。
これに対してコインは一枚一枚状態が違います。鑑定会社の評価は一つの目安にはなりますが、キズやスレ、アタリの箇所や洗浄の度合い、トーンの美しさなども評価の対象になります。この点で先ほどのソニー株の購入とは異質です。
つまり、コインの購入には専門性や目利きが求められ、その点でかなり特殊な金融商品だと言っていいでしょう。このような特殊性によって、コイン市場は株や債券など金融市場から隔絶されており、それが上記のような穏やかな値動きにつながっていると言えるでしょう。
コインが質的な分散対象として機能するのは単なる偶然ではなく、それなりの理由があるのです。
株の暴落に耐え抜くための「質的分散」の重要性
私自身、株式投資は長くやっており、今の資産は株式投資によるところが大きいのですが、株式投資一本では成功しなかったと思います。
たとえば、リーマン・ショックです。私が持っていた株も随分とやられました。おそらく最悪期には半分ほどに減っていたと思います。それでも私は株式投資をやめようなどとまったく思いませんでした。もちろん職業柄、株式投資には大きな価格変動を伴うことを知っていたこともありましたが、それだけではありませんでした。
当時から私はコインや貴金属、不動産などの現物資産へ資産を分散しており、そのことで損失を一定範囲に抑えられたのです。貴金属は株と一緒に売られてしまった時期もありましたが、コインの世界はまったくの無風状態でした。
もし、私が株式だけで運用していたなら、おそらくあの時点で持ち株の一部を売ってしまったに違いありません。少なくとも半分ほどは売っていたのではないでしょうか。あの時じっとこらえて株を持ち続けることができたのは、質的分散のおかげですし、それがその後の資産拡大に寄与したのです。
リーマン・ショック後もたびたび世界は経済的なショックに見舞われました。ギリシャから始まった2010年の欧州債務危機、2020年のコロナ・ショック、そして2025年の4月にはトランプ関税ショックがありました。その時々のショックのサイズに応じ、株価は大きく下がりました。おそらく今後も数年おきに経済ショックは起きるでしょう。
しかし、実物資産への分散はこれからも私たちを助けてくれるに違いありません。
田中 徹郎
株式会社銀座なみきFP事務所
代表/FP
