このままでは、10年後に預金500万円…近づく老後破産の足音
筆者がセツコさんの家計を整理してみると、その構造がはっきりとみえてきました。月14万円の収入に対し、自身の生活費(食費、光熱費、マンション管理費、保険、医療費など)が約10万円。そこに孫関連の支出が月9万円加わり、合計で月19万円。毎月5万円の赤字が続いていた計算です。
ここで、冒頭で触れた家計調査の数字を思い出してください。65歳以上の夫婦のみの無職世帯では平均月4.2万円の赤字。さらに、65歳以上の単身無職世帯も平均で月2〜3万円の赤字傾向にあります。セツコさんの月5万円の赤字は、この単身世帯の平均赤字額を大きく上回る水準でした。
月5万円の赤字は、年間で60万円。3年で180万円。しかし実際には、突発的な医療費や家電の買い替えも重なり、結果として400万円もの預金が消えていました。
「おばあちゃんのおうち、楽しい!」
孫たちはそういって駆け寄ってくるそうです。娘からは「今月もよろしくね、お母さん」と、預かるのが当たり前のような態度。セツコさんは、孫との幸せな時間を壊したくない一心で、自身の家計のことを口に出せずにいました。
「娘にも孫にも、嫌われたくなくって……。お金を渡すのをやめたら、もう来てくれないんじゃないかって」
FPの現場では、こうした相談をたびたび受けます。自身の老後資金が細っているとわかっているにもかかわらず、子や孫への支援をやめられない人は珍しくありません。
セツコさんの場合、仮にこのペースでの支出が続けば、10年後セツコさんが82歳の時点で、預金が約500万円まで減る計算です。80代ともなれば、介護サービスの利用や入院、施設入居など、数百万円単位の支出が突発的に発生しやすい時期です。予備資金が半減した状態でその局面を迎えるのは、非常に心許ない状況といわざるを得ません。
「なるほど……このままでは、自分の葬式代も残らないかもしれないんですね」
そういったセツコさんの声は、かすかに震えていました。

