内需の命綱「海外送金」に変調の兆し
こうした政策環境のなかで、内需の重要な下支え要因である海外フィリピン人労働者(OFW)からの送金にも変化の兆しがみられます。2月の送金額は前月比で減少し、前年比の伸び率も鈍化しました。今回の減速は、年初特有の季節性に加え、就労者自身の生活コスト上昇が送金余力を圧迫していることが背景にあると考えられます。つまり、雇用環境の急激な悪化というより、物価高による可処分所得の圧縮が影響している構図です。
このため、海外送金は引き続きフィリピン経済の安定装置として機能する一方、これまでのように個人消費を力強く押し上げる役割はやや弱まる可能性があります。今後、送金の伸びが低めにとどまれば、家計は支出の中身をより慎重に選別し、必需的な支出を優先するようになるでしょう。これは内需が「量的拡大」から「質的な変化」の局面に入ったことを意味しています。企業がこのコスト上昇と消費行動の変化にどう対応するのかが、今後の景気の底堅さを左右することになりそうです。
総じてみれば、フィリピン経済は足元で複数の課題に直面しながらも、なお基礎体力を維持しています。銀行部門はおおむね健全で、金融システム不安が直ちに高まる状況ではありません。一方で、持続的なインフレ圧力と送金の伸び鈍化は、今後の成長の勢いに影響を及ぼす可能性があります。当面は、金融の安定、物価の動向、家計の支出行動という三つの要素をあわせて見極めることが、フィリピン経済の実態を知るうえで不可欠となるでしょう。
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