むしろ、加齢とともに集中力は「深まる」?
年齢を重ねる中で、「集中力が続かなくなってきた」と感じている人もいると思います。加齢によって集中力は落ちるのでしょうか。
実は、私達が仕事をするときに必要な「深い集中力」は、年を重ねてもあまり低下しないという見方があります。確かに、加齢によって低下する能力も存在します。タスクを切り替えるのが億劫になったり、「次にやるべきことがパッと思いつかなくなった」という人もいるでしょう。これは、私たちの脳に備わる「ワーキングメモリ」の働きと関係しています。
ワーキングメモリとは、脳に入ってきた情報を一時的に保存・記憶しておく機能のことです。私たちはワーキングメモリに保存された情報を使って考えたり判断したりしますが、このワーキングメモリは容量が決まっており、保存できる情報の量には限りがあります。年を重ねると、このワーキングメモリの処理能力が、若い頃に比べて低下するといわれています。
若い頃は、あれもこれもと一度に多くの情報を記憶でき、必要なときにスムーズに取り出すことができます。このため、ある作業から別の作業へと素早く切り替えることもでき、作業をサクサク進めることができます。しかし、年齢を重ねると、一般的に処理スピードが遅くなり、タスクの切り替えに時間がかかるようになります。
一方で、加齢とともに伸びる能力もあるといわれています。それは、「なぜ私は今これに取り組むのか」「このタスクの価値は何か」という問いに対して、深い意味付けをする力です。年齢を重ねるにつれて、私たちは単発の出来事や情報を個別に処理するだけでなく、過去の経験や知識と照らし合わせながら、文脈の中で理解することが得意になります。認知科学の分野では、こうした能力は、経験の蓄積によって形成される「結晶性知能」や、情報を統合して全体像を捉える力と関係していると考えられています。
その結果、「あの出来事とこの出来事をつなげると、こんな意味が生まれる」「あの要素とこの要素を加味すると、このような判断ができる」といった具合に、物事の因果関係や全体像をとらえる力が、年齢を重ねたほうが高くなる傾向があるのです。
そして、この「深く意味付けする力」や「価値を理解する力」が向上することで、深い集中を伴う作業に入りやすくなります。仕事の価値を感じながら、長時間にわたって集中を途切れさせることなく、パフォーマンスを出すことができます。

