「私たちの結婚資金を…」甘い言葉で巧みに誘う海外投資
こうして何気ないやりとりから始まりましたが、女性からの連絡は毎日続くようになりました。
「今日はこんなことがあったの、もっとアキオさんの話も聞かせて」
自分を気遣い、必要としてくれる彼女の存在は、アキオさんの孤独な日常を潤していきました。いつしか二人は、将来日本で一緒に暮らすという約束を交わす関係にまで発展していたのです。
完全に恋に落ちてしまったアキオさん。疑う余地は一切なく、第2の人生を彼女と共に謳歌することを夢見ていました。
「将来、私たちが日本で一緒に暮らすための結婚資金を増やしていかない? 私がやっている確実な投資があるの」
「これ以上は出せない…」老後資産1,200万円が奪い去られた〈残酷な結末〉
彼女が指定した海外の投資サイトに登録し、まずは貯金のなかから数百万円を投入しました。画面上では順調に利益が出ているように見え、彼女からは「さすがアキオさん、私たちの未来が楽しみね」と熱烈なメッセージが届きました。
愛する女性に褒められたい、彼女との生活をより確かなものにしたいという思いから、アキオさんの行動はエスカレートしていきました。
彼女にいわれるがまま、「特別なキャンペーン」「税金の支払い」といった理由で次々と資金を投入し、ついには退職金の半分にも相当する約1,200万円もの大切な老後資金を、指定された口座や暗号資産のアドレスへと送金してしまったのです。
「もう少し資金を足せないかな?」という彼女の言葉に対し、アキオさんが「これ以上は今後の生活に関わるから、もう出せないよ」と返信したその日。
突然、彼女のSNSアカウントは「存在しません」という表示に変わり、連絡手段は完全に絶たれました。
何度メッセージを送信しても、トーク画面にはエラー表示が出るだけ。電話をかけても繋がることはありませんでした。その瞬間、アキオさんは自分が詐欺に遭った事実に直面し、呆然と立ち尽くしました。
「まさか金目当てだったなんて……」
まだ老後資産は残っているとはいえ、汗水流して築いた1,200万円が返ってくることはありません。そして、何よりも「老後の孤独を救ってくれる」と信じていた愛情がすべて偽りだったという事実に、アキオさんの心は完全に折れてしまいました。
SNSなどの顔の見えない相手から「投資」や「お金」の話が出た際は、いかに親密な関係であっても詐欺を疑い、直ちに警察や家族へ相談することが自身を守る防衛策となります。「自分だけは絶対に騙されない」という過信は捨てて、少しでも違和感を覚えたら勇気を持って関係を断ち切る警戒心が、大切な老後資産と心を守る第一歩なのです。
[参考資料]
警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」
