見えにくい高齢親の生活実態
「もう心配しなくていい」
そのLINEが届いたのは、ある冬の夜でした。会社員の修一さん(仮名・48歳)は、父・和雄さん(仮名・80歳)からのその一文に、少し違和感を覚えたといいます。
「いつもはもっと素っ気ない雰囲気の文章だったんです」
和雄さんは地方の持ち家で一人暮らし。年金は月14万円ほどで、修一さんは毎月5万円を仕送りしていました。
「これだけあれば、生活は回るはずだと思っていました」
電話でも「大丈夫だ」「困っていない」と繰り返していた父。その言葉を疑う理由はありませんでした。
しかし、その数日後、和雄さんが自宅で倒れているのが見つかります。幸い命に別状はなかったものの、しばらく入院することになりました。
「“心配しなくていい”の意味が、急に分からなくなりました」
修一さんは、父の家を整理するために久しぶりに帰省しました。玄関を開けた瞬間、空気の違いに気づいたといいます。
キッチンには使いかけの食材が残り、冷蔵庫の中はほとんど空。郵便物も未開封のまま積まれていました。
「生活がちゃんと回っていなかったんだと思いました」
そして台所の棚を整理していたとき、思いがけないものを見つけます。
封筒に入った現金でした。最初は数万円かと思いましたが、数えてみると、合計で50万円近くあったといいます。
「え……なんでこんなところに、と思いました」
さらに通帳を確認すると、修一さんが仕送りしていた5万円が、ほとんど手つかずで残っている月がいくつもありました。
「使っていなかったんです。生活費として送っていたはずのお金を」
代わりに、父は年金の範囲内で生活をやりくりし、仕送り分は現金で保管していたとみられます。
