「このままで大丈夫?」通帳が突きつけた現実と違和感
節子さんは、その場では何も言えませんでした。ただ、帰宅後に通帳を開いたとき、急に手が止まったといいます。かつて1,800万円あった貯金は、すでに1,400万円を下回っていました。
「このまま同じように出し続けていたら、自分の老後はどうなるんだろう、と初めて現実的に考えました」
これまでの支出は、すべて自分の意思で決めてきたことです。それでも、“当然のように受け取られる形”になっていたことに、強い違和感が残りました。
厚生労働省『2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況』では、児童のいる世帯の64.3%が生活を「苦しい」と感じており、教育費負担の重さは広く共有されています。だからこそ、家族内で支援が常態化しやすい背景もあります。
それでも節子さんにとっては、「いつの間にか“前提”になっていたこと」そのものが問題でした。
「助けたい気持ちはありました。でも、それが“当たり前”になるのは違うと思ったんです」
数日後、節子さんは長男に連絡を入れました。
「これからは、まとまったお金は出せないと思う」
電話の向こうで、長男は少し驚いた様子だったといいます。
「今まで出してくれてたのに、急にどうしたの?」
その言葉に、節子さんははっきりと気づいたといいます。
「やっぱり、“出してくれる前提”になっていたんだな、と」
現在は、節子さんは孫への金銭的支援を見直し、無理のない範囲での関わりに変えています。
「関係を断ちたいわけではありません。ただ、“続けられる形”にしないといけないと思いました」
家族への支援は、善意から始まります。ですが、それが繰り返されるうちに、言葉にされない“前提”へと変わっていくことがあります。
「相手のためにと思ってやってきたことでも、そのまま続けていいとは限らないんですね」
その気づきは少し苦く、しかし現実的なものでした。
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