前回は、公正証書遺言書の作成を勧める理由について解説しました。今回は、夫婦で遺言を残す場合のポイントを見ていきましょう。

二次相続も見据えた遺言書の作成を

一次相続を見据えた遺言書を作成する場合、おそらく夫が中心になって考えるのではないでしょうか。しかし遺言書は遺言者が各自で1通作成するものなので、夫婦で1つの遺言書をつくることはできません。結果として、夫が先に亡くなる前提で、夫の署名捺印で作成するのが一般的ではないでしょうか。

 

ですが、長く相続対策の経験を積んできた私たちは、公正証書遺言書は夫婦でそれぞれ1通ずつ、計2通を同時に作成するようにすすめています。夫婦といえども固有の財産をそれぞれ保有していますし、そもそもどちらが先に亡くなるのかはわかりません。よって、いずれのケースにも対応できるよう、別々に1通ずつ作成するのです。

 

内容に関しては基本的に同じで結構です。夫が先に亡くなれば妻にこの財産を相続させる、妻が先に亡くなれば夫にこの財産を相続させる、財産の内訳に若干の違いがある以外は基本的に同じ内容でいいでしょう。

 

夫婦同時に遺言書を作成する方法としては、まずどういった内容の遺言にするのかを夫婦で話し合ってもらいます。そして遺言内容が決定したら、夫婦そろって公証役場に出向き、同時に1通ずつ作成します。税理士も立会人として公証役場に同行します。

 

公証人に対する手数料が若干割高にはなりますが、夫婦で1通ずつ同時に作成しておけば、一次相続だけでなく、二次相続も見据えた対応ができるのです。これは経験のある税理士でなければなかなかわからないでしょう。

子どもがいない夫婦は必ず2通遺言書を作成する

とくに子どものいない夫婦の場合、必ず2通つくってもらいたいと思います。夫婦で1通ずつ作成していれば、どちらが先に亡くなっても兄弟姉妹に財産が相続されてしまうことはありません。兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言書に妻(あるいは夫)に全財産を相続させると記載しておけば、遺留分の減殺請求ができないからです。

 

元気なうちに遺言書をつくるのはためらわれるかもしれません。しかし病気になってからでは、時間をかけて内容を熟考できないものです。あとに残される人に問題を先送りしないためにも、元気なうちにこそ、公正証書遺言書を作成してもらいたいのです。

本連載は、2013年12月19日刊行の書籍『相続大増税の真実』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続大増税の真実

相続大増税の真実

駒起 今世

幻冬舎メディアコンサルティング

2013年度の税制改正による「基礎控除の4割縮小」と「最高税率の引き上げ」で、これまで相続税とは無縁と思っていた一般家庭にも、相続増税の影響が直撃する可能性がでてきました。 「今すぐ節税をはじめなければ、とんでもな…

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