前回は、税務調査の現状と対応策について解説しました。今回は、すべての人に関係がある「相続手続き」について見ていきます。

葬儀の手配、保険金受け取り、銀行口座関連・・・

現行税制における課税対象者は約4%ですが、残りの96%の人は何もしなくてもいいわけではありません。相続税の手続きが必要な4%の人も含め、100%全員の人が必ずしなければならないのが相続手続きです。

 

相続手続きとは、被相続人が死亡後に遺族が中心となって進める諸手続きのことです。葬儀関係の手配はもとより、生命保険金や死亡退職金などをもらう手続き、自動車保険や銀行引き落とし口座の変更などの引き継ぐ手続き、クレジットカードや各種会員証などをやめる手続きなど、すべて合わせると以下のように、約90種類にのぼります。

 

これらの相続手続きが次から次へと出てくるため、遺族の方は、わからないまま支払わなくてもいいものを支払ったり、受け取れるものを受け取っていなかったりと、経済的な不利益を被っています。

 

もしくは手当たり次第に手続きを行ったために、自分以外の相続人に何度も実印の捺印と印鑑証明書の追加提出をお願いすることになり、円満な親族関係に猜疑心が芽生えてしまう可能性もあります。

 

とりわけ核家族化した現在、どちらか一方の親が亡くなっても、子どもは親元を離れて暮らしているため、相続手続きを遺族で協力して行えないケースもあります。たとえ子どもが実家や近くで暮らしていたとしても、配偶者も含めて誰も手続きの方法がわからず、途方に暮れてしまうのです。

 

「具体的に何から手をつければいいのかわからない」
「誰に相談したらいいのかわからない」


身内が亡くなって気持ちの整理がつかないなか、必要な手続きが多すぎてパニックに陥ってしまうのです。さらにいえば、相続手続きだけでなく、その後の遺産整理を誰に頼むのかという問題もあります。昨今は孤独死も増えているため、こうした手続き上の問題が新たに生まれているといえるでしょう。

「知らなければ損をする」手続きも数多いだけに・・・

各種手続きのなかには、知らなければ損をするケースがいくつもあります。その一例を紹介しましょう。


●未入籍の配偶者
年金制度でいう配偶者とは、戸籍上に限らず、事実婚も対象になります。婚姻の届出をしていない場合でも、対象となる場合があります。

 

●高額療養費
医療費の負担は税金の還付ばかりではありません。健康保険制度には、暦月単位に自己負身内が亡くなって気持ちの整理がつかないなか、必要な手続きが多すぎてパニックに陥っ担額が一定額を超えた場合、超えた分が戻ってくる高額療養費の制度があります。被相続人が入院したのち、亡くなった場合、本来、故人に支払われるべき高額療養費が遺族に支払われます。

 

●カードの停止
クレジットカードは放置すれば年会費の発生が続きます。また、カード会社経由で加入しているがん保険なども解約手続きが必要です。

 

●未支給年金
年金給付の受給権者が裁定請求せずに亡くなった場合や、年金受給中に亡くなった場合で、まだ故人に支給していなかった年金があるときは、未支給年金として支給されます。

 

これらは手続きのほんの一例にすぎません。相続対策に詳しい専門家のなかには、こうした相続手続きも専門に行っているケースもあります。相続は人生に一度か二度しか経験しないものです。手続きに慣れていないのはある意味、仕方がありません。専門家に相談し、手続きの方法などのアドバイス、診断、助言をもらったほうが、遺族の方々のストレスを少しは軽減できるのではないかと思います。

本連載は、2013年12月19日刊行の書籍『相続大増税の真実』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続大増税の真実

相続大増税の真実

駒起 今世

幻冬舎メディアコンサルティング

2013年度の税制改正による「基礎控除の4割縮小」と「最高税率の引き上げ」で、これまで相続税とは無縁と思っていた一般家庭にも、相続増税の影響が直撃する可能性がでてきました。 「今すぐ節税をはじめなければ、とんでもな…

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