孤独の中で深まった関係と、止められなかった送金
定年まで会社員として働き、退職金約2,200万円を得た康夫さん(仮名・67歳)。預貯金と合わせた金融資産は約3,000万円。夫婦で穏やかな老後を送る予定でしたが、数年前に妻を亡くし、一人暮らしをしていました。
「時間はあるけど、話し相手がいない。それが一番こたえました」
そんなとき、SNSで一人の女性と知り合います。相手は海外在住を名乗る女性で、自然な日本語を操りました。
「最初は軽いやり取りでした。でも、毎日連絡をくれるようになって…」
「今日もお疲れさま」
「あなたと話す時間が一番落ち着く」
やり取りは次第に頻繁になり、電話やメッセージを通じて親密さが増していきました。
「誰かに必要とされている感じがして、うれしかったんです」
関係が深まった頃、女性から相談を持ちかけられます。
「実は、トラブルに巻き込まれていて…」
「すぐに解決できるけど、今だけお金が足りない」
頼まれた金額は、数十万円でした。
「正直、迷いました。でも、“困っているなら助けたい”と思ってしまったんです」
送金後、女性は何度も感謝の言葉を伝えてきました。
「本当にありがとう」
「必ず返すから」
そのやり取りが、康夫さんの不安を打ち消していきました。
その後も「あと少しで解決する」「これが最後」という言葉とともに、追加の送金を求められるようになります。
「ここまで来たら、途中でやめるのも…という気になっていて…」
結果的に、退職金や預貯金からの送金額は1,000万円を超えてしまいます。
「今思えば、完全に冷静さを失っていました」
転機となったのは、「日本に行く」という約束でした。
「ようやく会えると思ったんです」
しかし、直前になって「トラブルで出国できない」と連絡が入り、その後、連絡は途絶えました。
「その時点で、ようやくおかしいかもしれないと気づきました」
