「ここなら安心だから」子どもに勧められ老人ホームへ入居
「最初は、いいところだと思ったんです」
そう話すのは、有料老人ホームに入居した洋子さん(仮名・80歳)です。
洋子さんは夫に先立たれた後、自宅で一人暮らしを続けていました。年金収入は月14万円ほど。持ち家で生活しており、日常生活に大きな支障はありませんでしたが、転倒や体調不良への不安が徐々に大きくなっていきました。
「何かあったときに一人だと怖いから、と子どもに言われて」
長男夫婦の勧めもあり、見学を経て老人ホームへの入居を決めました。
「食事も出るし、人もいるし、安心だと思いました」
入居直後は、新しい環境に戸惑いながらも、規則正しい生活に慣れようとしていました。しかし、次第に違和感が積み重なっていきます。
「自由が少ないと感じるようになったんです」
食事の時間は決まっており、外出にも制限がありました。施設のルールとして当然の側面もありますが、これまで自分のペースで生活してきた洋子さんにとっては大きな変化でした。
「好きな時間に好きなことをする、というのが難しくなりました」
さらに気になり始めたのが費用面です。年金の大半がそのまま支出に消えていきます。
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2024年平均結果の概要』によると、高齢単身世帯では可処分所得を消費支出が上回る傾向があり、取り崩しを前提とした生活が一般的です。施設費用が加わることで、その負担はさらに重くなります。
「このまま払っていけるのか、不安になりました」
施設内での人間関係にも、戸惑いがありました。
「みんな親切なんですが、どこか距離があるというか…」
スタッフは業務として対応しており、入居者同士の関係も一定の距離感があります。
「家にいたときの“普通の生活”とは変わってしまったと感じました」
