(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢期の住まいとして、老人ホームへの入居を検討する人は増えています。安全面や介護体制への期待から、「これで安心」と考えるケースも少なくありません。一方で、実際の生活とのギャップに戸惑う声も聞かれます。国土交通省『令和5年度 高齢社会に関する意識調査(高齢期の住み替えについて)』でも、高齢期の住み替えには不安や抵抗感を抱く人が一定数存在することが示されています。環境の変化は、生活そのものを大きく変える可能性があるものです。

「ここなら安心だから」子どもに勧められ老人ホームへ入居

「最初は、いいところだと思ったんです」

 

そう話すのは、有料老人ホームに入居した洋子さん(仮名・80歳)です。

 

洋子さんは夫に先立たれた後、自宅で一人暮らしを続けていました。年金収入は月14万円ほど。持ち家で生活しており、日常生活に大きな支障はありませんでしたが、転倒や体調不良への不安が徐々に大きくなっていきました。

 

「何かあったときに一人だと怖いから、と子どもに言われて」

 

長男夫婦の勧めもあり、見学を経て老人ホームへの入居を決めました。

 

「食事も出るし、人もいるし、安心だと思いました」

 

入居直後は、新しい環境に戸惑いながらも、規則正しい生活に慣れようとしていました。しかし、次第に違和感が積み重なっていきます。

 

「自由が少ないと感じるようになったんです」

 

食事の時間は決まっており、外出にも制限がありました。施設のルールとして当然の側面もありますが、これまで自分のペースで生活してきた洋子さんにとっては大きな変化でした。

 

「好きな時間に好きなことをする、というのが難しくなりました」

 

さらに気になり始めたのが費用面です。年金の大半がそのまま支出に消えていきます。

 

総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2024年平均結果の概要』によると、高齢単身世帯では可処分所得を消費支出が上回る傾向があり、取り崩しを前提とした生活が一般的です。施設費用が加わることで、その負担はさらに重くなります。

 

「このまま払っていけるのか、不安になりました」

 

施設内での人間関係にも、戸惑いがありました。

 

「みんな親切なんですが、どこか距離があるというか…」

 

スタッフは業務として対応しており、入居者同士の関係も一定の距離感があります。

 

「家にいたときの“普通の生活”とは変わってしまったと感じました」

 

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