「取り崩し」と「運用」の板挟み
金融庁は「つみたてNISA早わかりガイドブック」などで、投資には価格変動リスクがあること、短期的な値動きに左右されない長期的な視点が重要であることを示しています。
しかし、老後資金の場合、状況は単純ではありません。
「若い人と違って、取り戻す時間がないんです」
隆さんは、評価額が下がっても保有を続けるべきか、それとも損失を確定して現金化するべきか、判断に迷いました。
一方で、生活費は確実にかかります。将来の取り崩しを考えると、これ以上の下落は避けたいという思いも強くなっていきました。
最終的に隆さんは、一部を解約する決断をしました。
「このまま不安を抱え続けるよりは、一度整理したほうがいいと思いました」
ただ、その時点で確定した損失は数百万円規模にのぼりました。
「“少し増やすつもり”が、逆に減らす結果になってしまった」
その後、残りの資産はより安全性の高い商品や預金に戻し、生活設計を見直しました。温泉旅行の計画も、以前より頻度を抑えることになったといいます。
「できなくなったわけではないけれど、思い描いていた形とは少し変わりました」
「リスクがあることは理解していたつもりでした。でも、“自分は大丈夫だろう”と思ってしまっていた」
老後資金の運用は、増やすことだけでなく、「減らさないこと」も重要な視点となります。特に、生活資金として使う予定の資産については、リスクの取り方を慎重に考える必要があります。
「全部を預金にしておくのが正解とも思いません。でも、“何のためのお金か”をもっと考えるべきでした」
老後の安心は、単に資産額の多さだけでは決まりません。その資産をどのように守り、どのように使うか。“少しの上乗せ”を求めた選択が、かえって生活設計を揺るがすこともある――その現実を、隆さんは実感したといいます。
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