施設入所後に発覚した“申告漏れ”
入所当初、夫婦の自己負担は抑えられました。隆一さんは「これなら何とかやっていける」と胸をなで下ろしたそうです。
ところが数ヵ月後、市区町村から確認の連絡が入ります。申請書に記載されていなかった預貯金や投資信託の存在が、金融機関照会などを通じて把握されたのです。
「そこまで見られるとは思っていなかった」
厚生労働省の資料では、補足給付と同様の運用として、自己申告に加え、介護保険法に基づく金融機関への照会が行われ、要件を満たさないことが判明した場合には返還や加算金の対象となり得ることが示されています。
その結果、夫婦の負担限度額認定は取り消され、軽減されていた食費・居住費の差額を遡って精算することになりました。
施設利用料そのものに加え、軽減されていた分の返還がまとまって発生したことで、夫婦は一気に多額の未払いを抱えることになりました。
「年金だけではとても払えませんでした」
見た目の月収は低くても、資産要件を満たしていなかった以上、本来は軽減を受けられなかったことになります。しかも、こうした判定の誤りや申告漏れは、後から修正されれば、まとめて負担が生じます。
隆一さん夫妻は、当初「収入がないのだから仕方ない」と考えていたものの、最終的には投資信託を解約し、使わずに残していた定期預金も取り崩して支払うことになりました。
高齢夫婦の家計は、収入だけを見ると心もとないケースが少なくありません。総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要』によると、75歳以上の二人以上無職世帯の可処分所得は月22万1,235円、消費支出は24万8,460円で、平均的には取り崩しを前提とした生活です。
ただ、公的な軽減制度は、こうした「月々の収入」だけでなく、預貯金や有価証券などの資産も含めて判断されます。資産を持ちながら“低所得層”として扱ってもらおうとすれば、制度の趣旨から外れるだけでなく、後でより大きな負担となって返ってくることがあるのです。
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