支えてもらうはずが…奪われていった「安心」
通院の付き添いを頼みにくくなり、デイサービスの話を出しても、「そんな余裕はない」と言われる。光子さんは、息子に遠慮して必要な支出までためらうようになっていきました。
見かねたのは、通院先の医療ソーシャルワーカーでした。事情を聞かれた光子さんが思わず涙をこぼし、地域包括支援センターにつながったのです。
そこで初めて、光子さんは「家族だから仕方ない」で済ませてはいけない線引きがあることを知りました。
厚生労働省の高齢者虐待防止に関する手引きでは、本人の合意なしに財産や金銭を使ったり、必要なお金を使わせなかったりすることは「経済的虐待」の例として示されており、具体例には「年金や預貯金を無断で使用する」ことも挙げられています。さらに、同省の令和6年度調査では、養護者による高齢者虐待の加害者の続柄は「息子」が38.9%で最も多く、虐待の種別では経済的虐待が16.4%を占めています。
「息子を悪く言いたいわけじゃなかったんです。でも、このままではいけないと思いました」
その後、光子さんは通帳とカードの管理を自分に戻し、介護保険サービスの利用も改めて相談することになりました。介護保険サービスは原則1割負担で、一定以上所得者は2割または3割負担です。家族だけで抱え込まず、公的サービスを組み合わせることが前提の制度です。
現在も光子さんと浩司さんの関係は続いています。ただ、お金の出し方や生活費の分担は書き出して整理し、第三者を交えて話すようになったといいます。
「“面倒みるよ”という言葉だけで安心してしまったのが、よくなかったのかもしれません」
子どもとの同居や支援は、老後の安心につながることもあります。けれど、親の年金や資産が家族全体の生活費として曖昧に扱われ始めたとき、その関係は支え合いではなく依存に変わります。
金銭面での境界を曖昧にしないことが、後悔を防ぐ第一歩なのかもしれません。
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