契約条件にあった「現況有姿」という項目
大手の不動産業者が抱える問題は、売るチャンスの損失につながる「囲い込み」などに限りません。
次も、私自身が体験したことです。
私は、ある不動産の購入を大手の仲介案件で検討していました。場所も価格も納得したので、古屋付き土地を購入し、建屋は解体して投資用アパートの建設を前提に、契約することになりました。ところが、契約条件に「現況有姿」という項目がありました。現況有姿とは、現在あるがままの状態(現況有姿)で土地を売買することです。
したがって、買主にとって何か不都合があったとしても、そのままの状態で引き渡されることになります。そこで、現地をよく確認してみると、隣の家の竹林がこちらの敷地に2m以上越境していました。しかも、隣地との境界を示す石が入っておらず、土地面積が不確定です。
この状態では、竹林が邪魔をして新たに建物を建てることもできません。民法上、隣家の竹を勝手に切るわけにいかないからです。また、隣地の地主ともめて、何ヵ月も敷地の境界が決まらなかったり、当初の予定より面積が小さくなったりする恐れもあります。
「面倒な交渉はしたくない」仲介業者
私は仲介業者に、「契約はするが、残金の支払いをする2ヵ月先までに、これらの問題を解決し、解決できなかった場合は契約自体をすべて白紙にする旨の内容の契約条項を入れるように」と迫りました。この場合の白紙条項とは、もし残金支払いまでに問題が解決しなければ、契約は白紙に戻し、手付金を返還するという内容です。
しかし、業者はこれに応じません。どうも、「面倒な交渉はしたくない」ということのようなのです。担当者は「購入後にそちらで解決してほしい」の一点張り。多分、売主にいまそんな話をしたら、売却を任せてもらえなくなるかもしれないという心配もあったのだと思います。
いくら面倒でも、売主と買主との利害を調整し、双方納得できる契約にまとめ上げるのが、代理人たる仲介業者の役割ではないでしょうか。お客さんの都合より自分自身の都合を優先してしまう。それが「大手」の現状です。買主側からも仲介手数料をもらうにもかかわらず、仕事は手抜きをするのです。
それでも私が要求を取り下げなかったため、結局は担当者が交渉をし、期日までには問題の解決ができました。もしそのような知識がなく、「現況有姿」で契約させられていたら、問題はすべて買主側に移転してしまっていたところです。