スヌーピーの生みの親、漫画家シュルツの故郷
四日目は終日のツインシティズ見物で、まずミシシッピ川を渡り、セントポール市に入り、ランドマークの前の公園に着くと、そこには世界中で今も愛され続けている漫画スヌーピーの主人公たち、チャーリー・ブラウンやルーシーのブロンズ像が迎えてくれる。
実はスヌーピーの生みの親チャールズ・M・シュルツはミネアポリス生まれで、第二次大戦後、ここセントポールで漫画家として出発し世界中に笑いと幸福の種をまいた。
ガスリーシアターから見る美しいミシシッピの風景
次にミネソタ州議事堂を観た。現在の姿は一九〇五年。ロタンダ式寺院風で、頂上まで六八メートル。支柱のない大理石のドームとしては世界最大だ。
一世紀前頃までの建物は豪華で壮大だが、階段ずくめで足腰がつらい。大広間、レセプションルーム、上院・下院会議室、州最高裁判所を見物できる。たかだか人口五百万程度のミネソタ州で、なぜ二院制度や最高裁のような大げさな政治機構があるかと訝られる人は最近はいないと思うが一応説明する。
アメリカでは州「政府」があり、五十の州(国家)の上にUSA(連邦政府)が作られている。連邦の長は大統領であり、連邦議会に入場する時、議員たちは野党も含めて全員起立して拍手で迎える。演説中でもヤジをとばす議員はいない。
つまり大統領は、日本で言えば天皇(国家元首)と総理大臣(行政の最高責任者)を合わせたような大きな存在である。四年おきに選挙で「国王」を選出しているようなもの、と言うこともできよう。
そしてもともと州が先にあったので、連邦の憲法や法律で決められていないことは、州の独自の判断に任されるのだ。日本でいう地方分権の議論とは逆である。
広い並木道を一キロメートルほど川に近づくと、これも巨大な古典ルネサンス様式のセントポール大聖堂に着く。米国では珍しいカトリックの寺院だが、ドームの高さは五三メートルで全米で四番目に大きな内陣を持ちステンドグラスが美しい。
これまでアメリカは憲法の政教分離で無宗教に見えると私は感じていたが、これはキリストやマリアの像やカテドラルなどが見あたらず、宗教色がうすい風景にだまされたのだ。
移民の国アメリカで国籍を与えられると、「アメリカ国民になる宣誓」を行うが、文末は「私に神のご加護のあらんことを」で終わっている。国民の多くは神の存在を信じ、いわば「キリストなきキリスト教」を心のなかに秘めている。見かけでだまされてはいけないと反省したい。
ミシシッピの川面を昔懐かしい外輪船でクルーズして、この旅最も爽やかな昼食をとった。我々夫婦が素早く二階デッキのアームチェアを占めたので他の八名から羨ましがられ、交代で座ることにした。
清いゆったりとした流れや両岸のうっそうとした森と微風、現代建築ガスリーシアターからの川と橋の大きな眺めも良い思い出になった。