卒婚という夫婦の形…離婚との違い
卒婚とは、法律上は夫婦関係を続けたまま、生活を別にする夫婦の形です。離婚に付いてくる問題を避けながら、夫婦の距離を調整できるとして、熟年離婚ではなく卒婚を選択する夫婦もいます。
離婚をすると発生するのが、財産分与、年金分割、相続といった問題です。
財産分与は結婚生活のなかで夫婦が築いてきた財産を、離婚時に分ける制度です。預貯金や自宅、不動産、場合によっては退職金なども対象になり、原則として夫婦で2分の1ずつ分けるのが基本とされています。
また、年金分割は婚姻期間中に積み立てられた厚生年金の記録を夫婦で分ける仕組みです。長年専業主婦だった配偶者でも、離婚後に一定の年金を受け取れるようにするための制度です。
さらに、相続にも違いがあります。離婚すれば元配偶者には相続権はなくなりますが、卒婚の場合は法律上の夫婦関係が続いているため、配偶者としての相続権は残ります。
離婚となると、これらの手続きの手間が発生したり、揉める原因になったりすることもしばしばです。そのため、年金世代では「完全に離婚するより、卒婚という形を選ぶ」というケースも少なくないといいます。
佐藤さん夫婦の決断…“卒婚生活”の現実
佐藤さん夫婦は話し合いの結果、こう決めました。
・正一さんは自宅に住み続ける
・美代子さんは近くの賃貸マンションへ引っ越す
・生活費はそれぞれで管理する
正一さんの年金は月約18万円。一方、美代子さんの年金は月約10万円です。美代子さんはパートの勤務を増やしてやりくりすると言いましたが、正一さんは月8万円を妻に渡していくことを決めました。
貯蓄や退職金を持つ正一さんの元にいれば、お金の心配はなかったはずです。しかし、それでも美代子さんは卒婚を選びました。
一方、美代子さんに8万円を渡した後、正一さんの手元に残る年金は月10万円ほど。足りない分は貯蓄を取り崩していくことに。とはいえ、貯蓄は2,400万円ほどあり、不安はありません。むしろ不安なのは生活力。食事も掃除も洗濯も経験がない正一さん。明るい表情の美代子さんに対して、その顔は曇ったままでした。
「一人で暮らしてみれば、厳しいこともおきるでしょう。気が済んだら戻ってくる。離婚ではないので希望はあります。そう信じて待つしかありませんね……」
定年は「夫婦の関係」を見直すタイミングでもある
定年は仕事人生の節目ですが、同時に夫婦関係が大きく変わる時期でもあります。長年すれ違ってきた生活が、突然同じ空間に。その変化に戸惑う夫婦も少なくありません。
卒婚は、その一つの選択肢です。離婚にはお金の問題が大きく絡みますが、卒婚は、その“制度の壁”を避けながら距離を取る夫婦の選択ともいえます。
ただし、卒婚は必ずしも理想的な解決策とは限りません。生活費や住まい、将来の介護など、新たな課題も生まれます。現実には、老後のお金という問題から完全に自由になることはできません。夫婦であっても、別々に暮らしていても、 年金生活の現実は静かに続いていくのです。
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